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火花天龙剑 -> 火炎之纹章 -> 覚醒 -Ishtar in the Dark-
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JuliusWoo



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覚醒 -Ishtar in the Dark-

覚醒 -Ishtar in the Dark-

夢の残滓が月影に重なって、光の輪郭を滲ませた。
薄く瞳を開けると、幕を降ろし忘れた窓際に、
ぼんやりと外を眺める者の陰が見えた。
夜鳴鳥の声が、しっとりと闇に溶けてゆく、夜の刻。
葉に降りた露の、朧気に弾く光を飽きもせず、淡々と眺めているのだ。

闇色に朱の色合いをほんの少しだけ馴染ませて、
時間だけが無意味に過ぎている。

開けていた瞳を閉じると、世界は寝台の上だけになった。
触れる絹が肌に溶けるような錯覚。
錯覚の中で、身体は寝台に沈んでゆく。
それらに身を任せてしまえば、夢の続きに落ちることは容易かった。

夢だと分かっていても、縋ることしかできなかった。

……

浅い夢に、潜っては浮かび、浮かんではまた潜る。
しかし、どんな夢も、現実の世界に敵わない。
それが為、彼女の夢はおぼろげな輪郭だけの世界である。

夢の中にも、月影が染める青の世界があった。
夢だから、起きれば醒めるという自覚があった。
それ故の逃げ場が確保されていた。

夢の中でも、彼女は寝台にあって、
誰かが、自分の髪を戯れに手で梳いている。
否、誰であるかなど、今更確かめるまでの事もない。
いつもの光景がそこにあるだけだ。

切なくもあり、愛しくもあり、
夢の中に特有の、儚さがあった。

自分の名を呼ぶ声がした。
寝台の絹が擦れる音が、やけに現実的に感じられた。

髪を梳くのに飽きたのか、やがてその手は彼女の頬を撫で始める。

薄く開いただけの瞼の睫毛越しに滲む月影は、
あいも変わらず青かった。

……

薄目を開くと、いつの間にか、窓が直ぐそばに来ていた。
窓の外に月の世界がある。

決して届かない世界ではない。
窓の硝子は夜風を感じさせない為の封印ではない。
外に一歩踏み出せば、そこは、今とは違う所なのだ。

しかし、彼女にはそれが出来なかった。

躊躇えば、未来が永久に変わってしまうことを、
彼女とて知らない訳ではない。

“イシュタルは意外と不器用だからな”

不意に降った言葉に振り向くと、椅子の背がきしりと音を立てた。
寝台の上に腰かけたユリウスが、こちらを見ている。

“踏み出したければ踏み出せばいい。風が欲しいのなら外に行けばいい”

その暗い瞳はまだこちらを見ている。
いや、私の背にある窓に映る月を見ている。

“イシュタル。好きにすればいいんだ。君の自由に、ね”

嘘だ、と、彼女は思ったが、口にしなかった。
こんなにも戒められた身体は既に、自由を忘れている。
始めから、自分に自由などあったのかさえ、定かではない。

笑って答える。

“いえ……私は傍に”

笑みに応えもせず、彼は月を見ていた。
彼女には何故か、彼の瞳に月が映るのが見えていた。



……

夢の残滓が月影に重なって、光の輪郭を滲ませた。
薄く瞳を開けると、幕を降ろし忘れた窓際に、
ぼんやりと外を眺める者の陰が見えた。
夜鳴鳥の声も止み、露が星の欠片と光るだけの青い闇が広がる。

飽きもせず月を眺める赤が、ほんの少しだけ傾いだ。
月影が丁寧に紅に青をさした、不思議な色合い。

上半身だけを起こせば、紅の瞳がゆっくりとこちらに向けられた。

現実はこんなに甘美なのに、
解放を求める飢えはこんなに募るばかりなのに。

それでも……。

日本一网站上看到的,那位达人翻译一下?

[楼 主] | Posted:2003-07-31 21:29| 顶端

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