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火花天龙剑 -> 外语学园 -> 封印の槍(搬运工劳作)
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雷文·菲鲁赛迪

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艾雷布的圣骑士(II)游戏王国的浪人(I)朱红之钻(I)图书馆の旅人(I)
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封印の槍(搬运工劳作)

 北トラキアと南トラキアの境・・・・・・青年王リーフが治めるレンスター王国とアリオーン王が統治する新生トラキア王国の国境にミーズの街がある。もとは統一を目指していた仲の良い兄弟国でありながら袂を分かち、暗黒教団によって引き起こされた戦乱の世が平定されてもここにはまだ厳然とした国境が存在していた。

 緑濃い豊かな国レンスターと、険しい山稜に支配されたトラキア・・・その二国の人々がが対話をする際には、ミーズをその場とすることが半ば暗黙の了解であった。
 レンスターの王女として生まれ、トラキアの王女として育った王女アルテナ。神々が人間に託した聖なる武器の1つ、地槍ゲイボルグを扱う“赤の竜騎士”。人々はアルテナが太守として治める街で商談をし、援助の契約を結び、馬を、竜を休ませて再び自分たちの国へと帰っていく。

 ・・・・・・そして彼らの対話が多くなるにつれて彼らの間には諍いも数多く起こっていた。


 ---深夜---

 ミーズ城壁の外、森へと入る街道から少し逸れた草地に、一団の男たちが二つの塊に分かれて対峙していた。ゆらゆらゆれる赤い松明の炎に照らされた男たちの瞳はぎらぎらと光っており、冬だというのに額には汗が浮かんでいた。

 「昼の会談で双方の意見は伝え合ったはずだが。結論も出た。」

 商人らしき一人の男が言った。それに対して彼の視線の先に居た男が声を張り上げる。

 「ミーズの役人の監視の下でな。あんな茶番を認める気は俺にはない。貴殿も納得がいかぬのだろう。でなければ、呼び出しに応じてここにくるはずが無い。」

 レンスターの農産物とトラキアの鉱物。その取引に対する商人たちの主張は、自分たちの権利を守るための利己的であるが切実なものであった。ミーズの役人は調整役をつとめ・・・・・・双方に不服を残す妥協案を提示した。

 「私たちは南と北に分かれてはいても同胞だ。損を承知で取引もする。しかし、それは程度の問題だ。慈善事業をやっているわけではない。」

 「同感だ。あのような条件、飲めるはずがない。・・・・・・・しかし、また改めて会談をやろう、というつもりではないようだな。」

 「ああ。」

 商人の姿をした少数の男たちの後ろには、傭兵の男たちの姿があった。剣の柄に手をあてたその姿はいつ何時動き出してもおかしくない。

 「・・・・このままではどちらかが斃れ、勝者も咎めを受けるだろうが退く気はないようだな・・・・・」

 「貴殿と同様にな。・・・・それに勝者となったなら、このことが知られぬように取り繕うこともできるだろう。」

 「違いない。」

 商人たちがず、っと後ろに下がった。抜刀した傭兵たちが向かい合う。じりじりと彼らが間合いを攻める。まさに彼らが衝突せんとしたとき、闇に閉ざされた空から激しい風が吹き付けてきた。
 大きな生き物が武器を帯びた男たちの間に降り立った。竜は首を伸ばし、一言鋭く声をあげる。その背から一人の人間がすっと地面に飛び降りた。

 「あなたがたは何をしているのですか!」

 凛とした女性の声に松明を持った男が明かりを向けた。そこには赤い鎧を纏い、槍を手にした美しい娘が背筋を伸ばして立っていた。

 赤い竜騎士・・・・・・
 アルテナ王女・・・・・・・・・・

 さやさやと小さな声が男たちの間を駆け巡る。

 「今、このとき、トラキア大陸の同胞たちで殺しあおうというのですか!」

 傭兵たちは一瞬怯んだものの。剣を降ろさなかった。彼らは雇い主の命令に従って働く忠実な僕だった。

 アルテナは動かない。竜と彼女は敵同士の間に立ち、『壁』となっていた。

 アルテナはかっと目を見開いた。

 「愚かな!まだわからないのですか!」

 彼女は手にした優美な槍を周囲の空気を切り裂くように一旋させた。清浄な光が闇を融かすようにぱあっと拡がっていく。・・・・・・目が眩んで顔を手で覆った男たちは、槍によって起こされた風を体に受けて後方に吹き飛んだ。起き上がった男たちは、聖なる槍からのオーラ、ノヴァの聖光を纏ったアルテナの姿を見た。・・・・・・・圧倒的な地槍の力に傭兵たちは剣を捨てた・・・・・・

 馬の蹄の音が響いてきた。ミーズの保安隊が到着したのだ。

 「・・・・・・・・あなたがたはミーズの法によって裁かれるでしょう。」

 忽ち取り巻かれ、縄がかけられていく。

 男が叫んだ。

 「アルテナ王女!ゲイボルグを持つ者よ!・・・・・・・王女の求めるものは私たちと同じものなのだ!・・・・・・だが、レンスターとトラキア王室のやり方は我々の双方からパンを奪っていきかねないものであることをよく考えて下さるがいい!そして・・・・あなたのやり方は所詮は力任せのやり方だ。我々が相手を力でねじ伏せようとした如く、あなたは我々をゲイボルグで押さえつけている。」

 アルテナは首を振った。

 「己を正当化する言葉は誰にでも言えます。私はあなたが自分の心臓の血でもってこの大地にその言葉を記さない限り、心動かされることはないでしょう。」

 男たちが連行されていき、保安隊の掲げていた松明もミーズの方に遠ざかっていった。・・・・暗闇に戻った場所で、アルテナは愛竜のごつごつした首筋を撫で、優しく叩いた。

 「アルテナ様・・・・・・・・・・」

 低い声がした。

 そこには彼女の補佐役である、青い髪の槍騎士が静かに立っていた。


  **********


 城に戻り、アルテナの左後ろを歩きながらフィンは言った。

 「アルテナ様が自らお出になられることはありませんでした。今回のことは保安隊の仕事です。」

 アルテナは歩みを止め、振り向いて忠実な騎士の顔を見た。

 「保安隊の召集ラッパが聞こえました。また厄介ごとが起こったのは明らかでしたし、深夜、夜目の利くドラゴンの方が馬より早く動けることも明らかでした。・・・・それに保安隊長から聞きだした話からも、私がそこにいくことが必要だと判断されました。私は間違っていますか。」

 「・・・・・・・・・・・」

 それは事実であった。アルテナが動かなかったら双方が衝突する前に保安隊は到着できなかったであろうし、一人の死者もなく事が収められたのはゲイボルグを携えたアルテナがいたからでこそある。

 城下で諍いが起こるとアルテナは必ず自ら動こうとした。城の中で焦燥感に駆られているより、そこでどのような事態を目にしようと自分自身が関わる方が楽だったのだ。

 「しかし・・・・・。アルテナ様が軽々しく城から出られることは善いことではありません。」

 アルテナの茶の瞳がまっすぐ槍騎士を見据える。

 「フィン、あなたは、私にミーズ太守という名を持った“飾り物”になれ、というのですか?」

 「・・・・・そのようなつもりは毛頭ございません、しかし・・・・」

 アルテナは背を向けて歩き出した。じきに彼女の私室の扉の前へと着く。王女の部屋を守る衛兵が敬礼をした。

 「おやすみなさい、フィン。」

 「おやすみなさいませ・・・・・・」

 アルテナが中に入って扉が閉められた。もう1つの扉が開けられて閉まる音が聞こえ・・・・・ドン、と鈍い音がした。衛兵が不思議そうにフィンを見る。

 「怪しい物音ではない。・・・・・・・中にお邪魔して確かめるまでのこともなかろう。」

 槍騎士はその音が何であるかを知っていた。しかし、彼はくるりと扉に背を向け、しんと静まり返った長い廊下を引き返していった。

 寝室のドアの前でアルテナは倒れるように座り込んでいた。

 傭兵達の真ん中に立った時、心の中は波立っていた。何度も戦場に立っている彼女であるが、憎悪の念に出会う度、心を乱される。
・・・・そうだ、そのとおりだ。あの男が言った通りだ。私はこの槍、この地槍ゲイボルグの力で民を押さえつけているに過ぎない。力によるまつりごと・・・・それは正しいことではない。

 私にこの槍がなかったら・・・・・

 彼女は膝をついたままぐっと拳が震えるほどに槍を握った。

 私はきっと何もできない・・・・・・

 そしてこの槍がある限り、私はこの槍に、圧倒的な力に頼り続けるだろう・・・・・・・。それは恐怖政治をしいていた、嘗ての帝国と何の変わりがあるのだろうか・・・・・

 愛するレンスターを、トラキアを、私は力で治めるしかないのだろうか。

 赤い槍騎士は肩をふるわせた。


  **********


 「アルテナさん!」

 白い僧衣を着た少年がレンスター城の一室で椅子から立ち上がった。入り口から入ってきたアルテナは軽やかに走りより、少年と抱擁しあった。

 「リーフからあなたがここに来たと知らされて、びっくりして飛んできました。コープル、だいぶ背がのびましたね。」

 「はい。でもリーフ様より随分低くて・・・・・・先ほど頭を下に押し下げられました。」

 アルテナは横手でナンナと一緒に立っているリーフを見て笑った。

 「コープルはこれから大きくなるのですもの。ついこの間声変わりしたばかりなのですからね。」

 歳若いながら、エッダ王国の最高位にある少年司祭は少しだけ視線をリーフに向けた。リーフが小さく頷く。

 「アルテナさん、随分久しぶりにお会いして、お話したいこと、たくさんあるんです。ナンナさんがお茶を用意してくださっているんです。お付き合い戴けますか?」

 深々とコープルがお辞儀をすると、アルテナはスカートの裾を優雅に掴んで会釈を返した。

 「はい、喜んで。」

 表敬訪問で訪れたいろいろな国のこと。エッダでの毎日の暮らし、姉のリーン、ハンニバル将軍と共に訪れたダーナの街での出来事。次から次へ、淀みなく嬉しそうに話す金髪の少年の話にアルテナは目を細めて頷いていた。

 「あ、御免なさい。僕ばかり話してしまって。アルテナさんはどのように過ごされていましたか?ミーズでの暮らしはどうです。」

 アルテナの表情にさっと影がさした。そしてそれはすぐに消えたが、コープルはそれを見逃さなかった。人の心の動きに敏いのは復活の杖、ヴァルキリーを継ぐ司祭としての特殊な力ではない。コープルがコープルであるからだ。

 「あまり・・・・うまくはいっていないのですけれど、長く対立していた南と北ですから・・・・分かり合えるまでに長い時間がかかるのは仕方がありません。」

 「そうなんですか。・・・・・・アルテナさん、無理はなさっていませんか。」

 「え?・・・・・無理をしているように見えますか?」

 「少ぅし・・・・・・・お疲れのように感じました。」

 ふっ、と無言の時間が二人の間を通り過ぎた。

 「エッダは平和ですね。・・・・・・・・戦のあと、一番早く復興したのはエッダだと聞いています。」

 「エッダはトラキア大陸のような複雑な事情を持っていませんから。・・・・・それに僕の国はブラギの神を信仰する者が集まった宗教国です。国民の心は宗教によって結ばれています。・・・・・・ですから他の国と比べようがありません。」

 「宗教による統治・・・・・ですか・・・・・・」

 アルテナは俯いた。

 「アルテナさん?」

 「・・・・・・・・・このトラキア大陸は対立が続いています。・・・・・・そして私はそれを武力・・・・・・・ゲイボルグによって抑えています。・・・・・・・そのようなやり方しか私にはできないのでしょうか。・・・・・・・レンスターに住む者も、トラキアに住むものも、安息や平和を求める心は同じはず・・・・・同じ事を祈っているはずです。だのに何故争いが絶えないのでしょう。あなたの国の人々が祈りで心を1つにするように・・・・・・・祈りではこの国を纏めることは不可能なのでしょうか。・・・・・・少し前から考えていたのです・・・・・・私が真に成すべきことは、人を殺める道具であるゲイボルグを携えて民の前に出ることではなく・・・・・・・戦う術を持たない無力な姿でただ一心に祈る姿を示すことではないのか、と。武力は更なる武力を呼ぶ・・・・・・この前の戦を戦ってきた私にはそれがわかっているのです。」

 姉と弟のような関係で、同じ場所で寝起きしていたこともあるコープルは知っている。アルテナが朝の祈りも夕の祈りも欠かさずに行っており、その祈りが非常に真摯なものであることを。

 コープルは静かに、一語一語言葉を選びながら尋ねた。

 「・・・・・・・・もしや、槍を捨てたいと思っていらっしゃるのですか?」

 「・・・・・・・・・そう・・・・・・・・かもしれません。・・・・・・・・・・・・・・・槍で何人もの命を奪ってきた私は既に神の前に立つ資格はないのかもしれませんが・・・・」

 コープルは微笑んだ。

 「アルテナさんはご存知のはずです。ブラギの神はなんびとの前でも信仰に到る門を閉じてしまわれることはないと。」

 「・・・・・・・コープル、あなたはお祈りをしていて、ブラギ神の声が聞こえたことがあると以前言っていましたね。・・・・・・でも私は祈っても祈っても神の声が聞こえたことはないのです。」



 コープルはとぽとぽとティーポットから紅茶のおかわりをアルテナのカップに注いだ。

 「折角ナンナさんが焼いて下さったケーキです。お茶が冷めないうちに残さずいただきましょう。ね、アルテナさん。」


  **********


 コープルが国に帰ってから、アルテナは弟たちと幾日かを過ごし、ミーズに戻ってきた。旅装を解き、自室でくつろいでいるとノックの音がした。

 「はい。」

 扉を開けると、フィンの親友であるレンスターの騎士グレイドの奥方セルフィナが控えていた。

 「セルフィナさん・・・・・どうなさったのですか。」

 その横にはフィンも居た。フィンが一枚の手紙をアルテナに渡した。

 「コープルからの手紙・・・ですか?」

 文面を読んでアルテナは手を口で押えた。

 「そんな・・・・・必要ありません。」

 フィンは首を振った。

 「コープル様はアルテナ様がお疲れになっており、エッダ神官として長い休息を取るよう勧めないわけにはいかない、とおっしゃっています。」

 「でも・・・・・・私はそれほど疲れているわけではありません。」

 「では少しは疲れていらっしゃるということですね。」

 言葉に詰まったアルテナにセルフィナが追い討ちをかけた。

 「ミーズの民もコープル様と同じことを思っているものが多くあるはずですわ。リーフ様も心配なさっています。骨休みしていらっしゃい。・・・・・・年長者の言うことは聞くものですよ。」

 自分はコープルにもリーフにも心配させるような悲壮な雰囲気を漂わせていたのだろうかとアルテナは自分が情けなくなった。フィンがゴホン、と咳払いした。

 「お休みになって下さい。城下でいざこざが起こるたびにアルテナ様が勝手な行動をとられ補佐をする私の心労も重なっております。それにコープル様はもう先方に連絡を取られたようですから、ここでアルテナ様が行かない、とおっしゃれば、コープル様にも迷惑がかかります。」

 アルテナは困ったように立ち尽くしていた。セルフィナがその肩に手を置く。

 「荷造りをお手伝いしますわ。そして、明日、私がアルテナ様をお送りいたします。」

 アルテナは無言で、コクリと頷いた。


  **********


 次の日、アルテナは馬上の人となっていた。地味なドレスを着、慣れない片鞍乗りで馬をあやつるアルテナは前方を行くセルフィナのあとを必死でついていっていた。馬の背には着替えなどの最低限の荷物。アルテナは自分を送り出した補佐役の槍騎士の言葉を思い出した。

 (アルテナ様、槍はお持ちにならないのですか)

 (フィン、私は戦いにいくのではないのです。むしろ、これから行こうとしているところは戦いと対極にある場所ですよ。)

 「さあ、着きましたわ。」

 セルフィナが行った。山間の湖のほとりには古い石造りの修道院が聳えていた。




 修道院長のシスターと話をし、セルフィナは帰っていった。アルテナには修道女の服の一揃いが与えられ、他の娘たちと引き合わされた。修道女としてずっと修行を積んでいるものもあれば、行儀見習いでここに来ている娘もいる。
 院長はアルテナのことを“しばらくここで皆さんと共に神の言葉を学ぶことになった新しい姉妹です。”と紹介した。彼女がレンスターの王女であるということは、院長と、麓の村の村長以外は知らないことであった。アルテナはかねてから打ち合わせておいた偽名を使って自己紹介した。戦場を癒しの杖をもって駆け巡り負傷者たちの命を救ったという母の顔を思いながら。

 「宜しくお願いいたします。私は・・・・・エスリンと申します。」

 年配のシスターたちは厳しかったが優しく、歳若い娘たちはアルテナに与えられた部屋に代わる代わる押しかけては楽しそうにお喋りをしていった。同室になった少女は地方領主の娘だということだったが、人懐こい娘で、互いに髪をとかしたり、彼女が苦手だという刺繍のやり方を教えてやっているうちに、緊張していたアルテナも力が抜けて自然な笑顔を見せられるようになった。
少女たちは美しく優しい年長のアルテナに憧れを持ち、姉のように慕い、アルテナは少女たちを妹のように可愛がった。

 修道院の生活は単調だが心安らかなものであった。朝の祈り、掃除、食事、信仰の学び、乳搾りやチーズ作り、薬草園の整備などの奉仕、短いが楽しい休息のとき、祈り、就寝・・・・・・・・ここには怒声を浴びせあう輩もいなければ、剣をふるうものもいなかった。


 アルテナはこの静かな修道院の中でも特に静かな場所である別棟として建てられた礼拝堂が好きになった。
 正面に作られた祭壇の上の十字架の横の腕と重なるようにして、十字架の後ろの壁に不思議な形の金属の杖が飾られている。あの杖は何でしょう、と院長に尋ねたが、彼女もそれを知らなかった。ただ、その杖は、昔この修道院の危機を救ったもので、記念としてそこにずっと掛けられているという。

 朝も夕も・・・・・そして暇ができれば彼女はその礼拝堂で祈っていた。神学の学びも誰よりも熱心に行った。それは授業を担当するシスターたちをとても喜ばせた。アルテナが質問しにいくと、丁寧に教え、神学の本を勧め、アルテナは寝る間も惜しんでその本を読みふけった。

 癒しの杖を初めて渡されたとき、アルテナは胸が高鳴った。

 目の前には朝に花を開いて今は萎んでいる花の鉢植えがあった。もしも杖で癒しの力をふるうことができたなら、短時間であるが、もう一度花はその命を取り戻して開くはずなのだ。

 アルテナは熱心に祈り、花に手をかざして杖をふった。・・・・・・・しかし、花は全くその姿を変えなかった。それはコープルも予想しえなかったことであった。

 アルテナは何度も繰り返した・・・・・・・しまいにはシスターが彼女の肩に手を置いて止めた。

 「もうお止めなさい・・・・」

 


  **********


 何故だろう・・・・・・
 アルテナはベッドに座り、肩をおとしていた。

 修道院に来てもう一ヶ月がたとうとしていた。

 ここに来てからの時間が自分とそう変わりない少女の祈りにも花は反応するというのに。・・・・・・・・正式なシスターが行使する人の傷を癒す術は使えなくとも、普通は花びらの一片を微かに動かすくらいのことは、発動体たる癒しの杖があれば可能だというのに。
 素養の問題ではない。母のエスリンは、シスターではなかったのに、シスターに負けぬほどに大きな治癒力を持っていたはずなのだ。

 何故?・・・・・・これは鎧を身につけ、人殺しの道具を振るい続けてきた報いなのか?・・・・・・

 (あのね、まんなかをもってにぎりこぶしみっつぶんまえ!)

 子供用に特別に作ってもらった木の槍を持ち、得意げに両親やまだ少年だったフィンにみてもらっていた自分。あのとき握っていたのが槍ではなく杖だったら癒しの力は使えたのだろうか。

 真剣に祈っているはずだのに・・・・・・トラキアの平和と融合と統一を・・・・・
まだ自分の心に奢りや迷いがあるのだろうか。

 シスター達はアルテナの焦燥や絶望感に気づいていたが、彼女をそこから救い出すことはできなかった。




 真夜中、しんと静まり返った礼拝堂の冷たい床の上で一人アルテナは自分には使うことができなかった癒しの杖をぎゅっと握って祈り続けていた。

 すると急にあたりが騒がしくなった。シスターたちの叫び声。少女たちの悲鳴。それに混ざって複数の男のだみ声が聞こえる。

 アルテナは反射的に柱の陰に身を寄せた。

 「おい、娘たちには傷をつけるな!売り飛ばす時に値が安くなっちまう。」
 「金持ちの娘は特に丁重に扱え!身代金を取るんだからな!」
 「兄貴、このババァたちはどうしましょう。」
 「うっちゃっとけ。煩かったらばっさりやっちまえ。」
 「もっと探せ!そこの小さな小屋もな!」

 足音が近づいてきた。ここには武器はない。この手の中にある杖しか・・・・本当は武人として育てられた自分が守らねばならないのに。・・・・もし運良く賊から斧や剣を奪えたとしても彼女には使えない。優しいシスターたちと可愛い少女たちを救わねばならないのに。

 礼拝堂に3人の賊が入ってきた。そのうち一人はまっすぐにアルテナが隠れている柱の方に近づいてくる。
 部屋の隅に追い詰められては動きが取れなくなる。アルテナは杖を剣の様に構え、祭壇の中央に走り出た。

 「うへー、見ろ。あんな上玉初めてだぜ。それにあのふっくらした胸、こねくり回して吸い付きたくなるじゃねぇか!」

 「ああ・・・・・・・高値で売れそうだぜ。」

 ダメだ・・・・・こんな棒切れ1つでは対抗できない。男たちは賊といっても確かな訓練を受けたことがあるようだった。兵士崩れかもしれない。礼拝堂という神の家にいながら神は彼女を助けてくれはしない・・・・・・・・

 彼女は後ろに飛びのき、十字架の横に掛けられていた金属製の杖を手にとった。これならばまだ戦うのに少しはマシだ。

 (何、これは・・・・・・)

 杖を握ってアルテナは驚愕した。その杖の重さは彼女の手にしっくりとなじんだ。

 “まんなかをもってみっつぶんまえ!”

 その通りに手を滑らせると、その場所は微かだが握りやすいように僅かに細く加工されていた。とすれば・・・・・
 アルテナは杖の飾りを勢い良く横に引いた。そこからは少し錆びていたが、紛れもなく金属の穂先が現れる。

 (これは槍だわ!)

 アルテナはその槍を構え、男たちに向き直った。何が起こったか把握していない男たちの間を駆け抜ける。二人の男は足の腱を切られ、うずくまる。残る一人は斧を構えて突進してきた。レンスターの王女はひらりとかわし、男の腿に槍を突刺した。

 呻く男たちをその場に残し、人声のする方にアルテナは走った。邪魔になる修道女の服のスカートを途中から切り払い、髪を押えていた布を後ろに飛ばし・・・・・・

 「エスリン姉さま!」

 茂みから声がした。同室の少女が飛び出してきてアルテナに飛びついた。
 アルテナは少女の目を見てはっきりした声で言った。

 「あなたは馬に乗れると言っていましたね。この事態を馬で麓の村に報せて下さい。村長様に私の名前を出せばきっと砦に連絡をとって下さって援軍がくるはずです。・・・・・月が明るい夜ですからきっと大丈夫。さあ、行きなさい!」

 (そうすれば、もしも私が斃れてしまっていても、シスターたちが助かるかもしれませんから・・・)

 アルテナは少女が馬に乗って道を走っていくのを見届けてからシスターや少女たちが集められ、押し込められていた部屋に飛び込み、叫んだ。

 「こちらを見てはいけません!」

 見張りに立っていた男を切りつけ、返り血を受けたアルテナの姿に少女が悲鳴をあげた。アルテナは冷静に男たちの動きを読む。近くの男はかわし、シスターを人質にしようと走った男の足に向かって槍を投げる。転倒した男に走りより、槍を引き抜くと、シスターを背後に庇い、槍を構える。

 次の一旋でまた一人の男の動きを止めた。二人、三人。気づけば敵はあと一人になっていたが、アルテナの息もだいぶ上がっていた。

 ただひとり残った首領らしき男が剣を構えなおした。

 「槍か・・・・・・いやな武器だぜ。昔のことを思い出させやがる・・・」

 アルテナは男と二、三度切り結んだ。

 (この男・・・・・槍での戦いの方法を知っている・・・・・?)

 長い戦いになった。・・・・・・・アルテナはもはや手加減をすることができなかった。・・・・男がアルテナを殺そうと剣をふりかぶった瞬間、アルテナは槍の穂先を深々と男の腹に突刺していた。

 少女たちはろうそくをともし、明かりを確保した。足を傷つけられ動けなくなった男たちは縛って1つの部屋に閉じ込め、そのままでは命に関わる怪我を負った賊は床に広げられたシーツの上に寝かされ、シスターたちが癒しの杖を手に、一心に祈っていた。その横でアルテナは槍を手に静かにずっと立っていた。少女の一人がアルテナの頬についた血を手拭で拭ってくれた。

 「ありがとう・・・・・・・・・」

 アルテナはその手拭を受け取ると槍についた血を丁寧に落とし、一人で礼拝堂へと歩いていった。



 (ブラギの神よ。この槍が・・・・戦いの道具が礼拝堂にあったということは何を意味するのでしょうか。)

 彼女には神の声は聞こえてこなかった。

 アルテナは一度槍をぎゅっと抱きしめると、祭壇の上に置いておいた飾りを取り上げ、穂先にかぶせると、槍をもとあった位置にかけた。

 (有難う・・・・・・そして、あなたがもうこれ以上戦いの為に使われることがないように私は祈ります・・・・・・・)

 ずっと放置されていた癒しの杖を手にしたとき、夜が白んで朝の光が窓から射してきた。
 蹄の音が遠くから聞こえる。援軍の到着だろう。アルテナはこのことを院長に報せるべく杖を抱えて礼拝堂を出ていった。




 修道院の門の前に立ったアルテナは兵士たちを出迎えた。

 「騒がしてしまい申し訳なく思います。賊は捕らえました。今、修道院の中に拘束してあります。修道院長様の許しは得ています。中に入って彼らを正式に捕縛して下さい。くれぐれもここが修道院だということは忘れないように。」

 部隊長は深く一礼し、部下を連れて門を入っていった。その集団の中に、馬を走らせていった同室の少女の顔を見つけてアルテナは走り寄った。少女はとびついていって泣きじゃくった。

 「エスリン姉さま、無事でよかった!姉さま、服にいっぱい血がついていて、きっともう死んでしまっていると思ってた。」

 「大丈夫よ。修道院で死んだ人はいなかったわ。私たちも・・・・私たちを襲ってきた者たちも・・・・・・・」

 アルテナは少女が手の甲を酷く擦りむいているのに気づき腰のベルトに手挟んでいた癒しの杖を手にとった。清浄な光が出て傷は綺麗に塞がっていく・・・・・
 その奇跡を目にして一番驚いたのはアルテナ自身であった。そして、杖をどのようにして握ったのかを思い出して微笑んだ。

 真ん中を持って握りこぶし三つ分前・・・・・・

 それはレンスター流の槍の握り方そのものだった。


   **************


 アルテナがミーズに戻った時、謁見の間にはコープルが待っていた。今度の事件のことを連絡され、心配して貴重なワープの杖を使ってここまで来たのだ。

 アルテナは何もあなたが気にすることはないのです。と言って抱擁した。その様子をアルテナの補佐役たるフィンが見守っていた。


 「コープル。フィン。私はゲイボルグを封印しようと思うのです。」

 穏やかな瞳で言われてコープルは顔を曇らせた。

 「アルテナさんの気持ちはわかります。しかし、神々から我々に与えられた武器は人の力をもって完全に封印することなどできないはずです。どのような場所にどのような魔法を使って封じたとしても・・・・」

 アルテナは首を振り、ゲイボルグを手にとって、謁見の間の一段高い場所の壁にたてかけた。

 「今、私以外にゲイボルグの使い手はいません。・・・・・・私以外でこの槍をふるえるものはないのです。私は私の決意をもってゲイボルグをこの場に封印しようと思います。この、手を伸ばせば届く場所に。・・・・・・・・・おそらく運命はまたこの武器が必要とされる時代を私たちに与えるでしょう。しかし、その日が来るまでは私は決してこの槍を使わないことを誓います。・・・・・・コープル、フィン。あなた方二人が証人になって下さい。」

 「アルテナ様・・・・しかし、それは・・・・・」

 口を開いた槍騎士の脳裏にはノヴァの聖光に包まれたゲイボルグを手に戦場を颯爽と駆けた嘗ての主君キュアンの姿が浮かんでいた。だが、言いかけていた言葉はアルテナの瞳を見て消えた。

 「わかりました・・・・・・・・・・・・ならばアルテナ様の分まで私が槍をふるうことといたしましょう。・・・・・・」

 コープルは背伸びして、アルテナの首に小さなメダリオンをかけた。ブラギの刻印が成された聖職者のしるしだ。

 「コープル・・・・・・・・私はシスターではありません。これから祈ることは続けていっても、わたしはやはり必要があると思えばゲイボルグ以外の槍をこの手にとるでしょう。ですから。」

 コープルは目を閉じた。

 「アルテナさんが完全に槍をとることを放棄してしまっていたなら僕はそのメダリオンを渡したりしませんでした。・・・・・・ずっと掛けていて下さい。」




 ミーズを出立するときにコープルはフィンに言った。

 「結局神々の意志に対抗できるのは人の決意だけなのかもしれません。・・・・アルテナさんが再びゲイボルグを手にしようという日がくるかもしれません。そして、アルテナさんが一度そう決めたなら僕たちがいくらゲイボルグを隠したところで、封印はいずれとかれてしまうでしょう。・・・・・・しかし、僕たちはアルテナさんの意志を支えることはできます。折れそうに、崩れそうになって“ゲイボルグを手にしたい”と感じた時、小さな支えがあるだけで封印は崩れることなく却って前より強固になりもするのです。・・・・・・・・僕はいつもアルテナさんと一緒にいたいですけれど、そういうわけにもいきません。・・・・・・・・お願いします。僕の代わりにアルテナさんを支えてあげてください。」

 「今までずっと補佐役としてお仕えしてきましたが・・・・支えとはなりきっていなかったようでした。・・・・・・思いつめ、無理をなさり・・・・・どうすれば私如きが支えとなるのでしょう。」

 コープルは笑った。

 「簡単なことです。とてもね。・・・・・あなたはそのやり方を知らなかっただけです。」

 少年司祭は槍騎士の耳に短く囁いた。

 「本当に頼みましたよ。!」

 少年司祭はワープの杖をふるうと自分の故国へと魔法で帰っていった。



  ***************


 「ねえ、お母様、この方はリーフ叔父様でしょう。」

 母親はにっこり笑った。

 「そしてあっちがアリオーン叔父様。お馬さんに乗っているのがお父様。・・・・・・・・あれ、でもそうしたらこの人は誰?」

 画家が新しく描き上げてミーズ城の壁に掛けられた絵を前にして父親によく似た青い髪の少女は首を傾げた。





 レンスター王国とトラキア王国は不幸な時間を越えて再び1つの国となった。それに関した絵は何百となく描かれたが、最も有名な絵画はミーズ城に飾られている三面の絵である。この絵と同じ構図の絵だけでも30は下らない。
左の絵には白銀の鎧に身を固めたリーフ王が、光の剣を掲げて立ち、右に居る人物に笑いかけている。そして右の絵ではアリオーン王が天槍グングニルを手にしてリーフの方を見て、彼と同様微笑を浮かべている。
他の二つの絵よりぐんと背丈の高い中央の絵の上部には赤い竜騎士と謳われたアルテナ王女が竜を駆り、地槍ゲイボルグを掲げている。リーフ、アリオーン、アルテナ。三人の持つ武器の先が形作る三角形は『統一の三角形』として絵画の解説書には必ず触れられている。

 注意深く絵画を見ると、アルテナ王女の竜の遥か下に白い馬の姿を認めることができるだろう。その馬を操っているのは、アルテナ王女の片腕としてミーズを治めたトラキア半島一の槍騎士と名高いフィン=マクニールだということは多くの歴史家や絵画研究家が“ほぼ疑いない”、としている。しかし、彼が大切に抱きかかえるようにして馬に乗せている一人のシスターが誰であるかは諸説があり確定していない。
 癒しの聖女と呼ばれたこのシスターは、統一前の不安定な状況の中、災害が起こって怪我人が出たり、疫病が流行ったりしたときには必ず現れて身を粉にして働いたという。彼女のもつ癒しの杖は、絵画上では通常の杖より長くまるで槍のように描かれることが大半だがその理由もわかっていない・・・・・・・・・




 ずっと首を傾げていた少女は父親が抱きかかえている女性を指差して

 「これがお母様でしょう?だったら、お空を竜で飛んでいるあの人は誰?」

 と今度は首を反対側に倒して考え込んだ。

 「あとでゆっくりお話しましょうね。お父様も一緒の時に。」

 シスターの服を着た母親は随分重くなったわが子を抱き上げて優しくほお擦りした。





 謁見の間に置かれたゲイボルグは、あれ以来封印を解かれることなく、ゆったりとこの国の行く末を見守っているという。


 
77779ラッキーキリ番 “天体観測”様よりのキリリク小説です。アルテナがシスターに転職する話を・コープルの影響・ゲイボルグの封印・南北トラキアに対する平和の祈りと絡めて、ということでした。全ての条件を満足させる話にするのに無理を生じ、転職についてもゲイボルグの封印についても中途半端な形となってしまいました。トラキアにはまだまだ問題が山済みですが、アリオーンとリーフの在位中、しかもかなり早い時期に統一トラキアを実現させて欲しいものです。そのとき、アルテナは本当に普通の槍もゲイボルグの傍に封印することができるようになったはずです。
 アルテナには幸せになって欲しいので、どうしても旦那さんや子供の話を本編にくっつけてしまう悪い癖があります。独身を貫いて孤高の存在として生きる彼女にも惹かれますが、彼女の家系が為政者という立場でなくずっとずっと南北トラキアを優しく見守っていく役割を果たしていく方向も捨て難く・・・・結局後者をいつも選択してしまいます。

 かなりリクからは外れてしまい申し訳ありません。挑戦しがいのあるリクを与えて下さった天体観測様に心より御礼申し上げます。


庄子与惠子游于濠梁之上,庄子曰:条鱼出游从容,是鱼之乐也,惠子曰:子非鱼,安知鱼之乐?庄子曰:子非我,安知我不知鱼之乐?惠子曰:我非子,固不知子矣,子固非鱼也,子之不知鱼之乐,全矣。庄子曰:请循其本,子曰汝安知鱼乐云者,既已知吾知之而问我,我知之濠上也。
[楼 主] | Posted:2006-06-22 13:07| 顶端
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呃,怎么我这里看这篇好多方框啊
看别的文章没问题啊

[1 楼] | Posted:2006-06-23 12:35| 顶端
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北特拉基亚和南特拉基亚的边境……在年轻的国王利夫统治的雷斯塔王国和阿里奥恩王统治的新生特拉基亚王国的国境处坐落着一个小镇米兹。原本向着统一而保持友好关系的兄弟国家终于发生决裂,由于暗黑教团引发的战乱即使平定下来,这里还是保持着国境的那种隔阂。

郁郁葱葱土地富饶的雷斯塔和被险山峻岭支配的特拉基亚……两国若是要进行对话,选择米兹那里基本上已被默认了。
出生时是雷斯塔的公主,而被当作特拉基亚公主抚养的公主阿尔蒂娜。是驾御神明托付给人间的武器之一的地枪盖依波鲁古的“赤色龙骑士。”人们在她作为太守治理的这个镇上商谈,签署援助的协议,让龙和马休息后再回到各自的国家去。
 
……然而,随着他们对话的增多,相互争论也越来越多了。
 
 ---深夜---

米兹的城墙外,稍稍离开通往森林的街道入口的草地上,一群男人分成两伙对峙着。晃动着的松明的赤色火焰映照在男人们的眼睛里,虽然是在冬天他们额头上也沁出汗来。
 
“在白天的会谈中双方已经交换意见了。而且结论也有了。”
 
商人打扮的一个男人开了口。而他视线所盯着的男人却更大声。

“在米兹的官员监视下是这样。我根本不会认那种过家家的帐。你也不会答应的吧。不然也不会答应现在出来了。”
 
雷斯塔的农作物和特拉基亚的矿物。对于这样的交易商人们的主张是彻底的利己主义。米兹的官员做了回中间人……但好象提出了让双方都不满意的提案。

  “我们虽然分南北但还是同胞。知道有点亏也是做生意的。但是,那有个程度的问题。老子不是什么搞慈善捐助的。”

“同意。那种条件怎么能答应……但是,看你的样子也不象是要重新谈啊。”

“啊。”

  商人打扮的少数人后面是一些佣兵。从紧握剑柄的手的姿势来看随时都会动手。

“……这样的话总有一方被杀,而胜利者也会受到制裁,不过即使这样也都不肯让步呢……”

“和你想的一样。……但赢的话,也可以把这事件埋藏在黑暗里吧。”
 
“没错。”

商人们径直后退。而拔出武器的佣兵们则迎了上来。他们逐渐缩短距离。双方正要冲突起来的时候,被黑暗遮蔽的天空中吹来了劲风。

巨大的生物降落在手持武器的男人们中间。龙伸着脖子长啸一声。从它的背上一个人影跳了下来。
 
“你们在干什么!”

 
男人们将松明指向那发出威风凛凛的女声的地方。披挂着红色铠甲手持长枪的美丽女子亭亭玉立在那里。 

赤色龙骑士……
阿尔蒂娜公主……


低低的声音在男人间迅速传递。

“现在,就是现在,特拉基亚的同胞们准备自相残杀吗!?”

佣兵们一瞬间有胆怯的表现,但没把剑放下。他们可以雇主忠实的仆人。
 
阿尔蒂娜没有动,龙和她站在双方之间,成为“墙壁”。

阿尔蒂娜猛睁开眼。
 
“愚蠢!你们还不明白吗!?”

她手中线条优美的长枪像是划开空气般旋转了一圈。如同圣光要融化黑暗般扩散开去。……因为刺眼的光芒而用手遮住眼睛的男人们被长枪卷起的风扫飞了出去。映入爬起来的男人们的眼睛中的,是被圣枪的力量,诺瓦圣光所包裹的阿尔蒂娜的身姿。……在地枪压倒性的力量下佣兵们扔下了剑。

  马蹄声由远而近。米兹的保安队赶来了。

  “……你们将受到米兹之法的制裁。”
 
说完就去把他们捆绑起来。
 
男人们开始叫喊了。

“阿尔蒂娜公主!持有盖依波鲁古的人!……公主你所希望的应该跟我们是一样的!……但是,雷斯塔和特拉基亚王室的做法从我们双方手中抢走了食物这件事也请好好想想吧!而且……你的做法也不过是以暴制暴。就像我们相互用武力将对方制服一样,你只是用盖依波鲁古把我们制服而已。”

  阿尔蒂娜摇摇头。

“为自己的行为辩护的话谁都会说。在你未用自己心脏的鲜血把刚才的话语记录在着大地上,我是不会相信你的。”

男人们被带走,保安队的松明往米兹的方向远去。……在恢复昏暗的地方,阿尔蒂娜给心爱的飞龙温柔的抓着脖子。

“阿尔蒂娜大人……”
 
一个低沉的声音。

是辅佐她的人,兰发的枪骑士安静的站在那里。


  **********


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[2 楼] | Posted:2006-06-27 09:17| 顶端
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翻译管翻译,我不喜欢这样的作品...
太做作,到处都是定语以及形容词、副词的堆积。
没有节奏感、没有文学构图、没有蒙太奇。
或者是我翻译以及欣赏的水平有限的缘故吧...


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[3 楼] | Posted:2006-06-27 10:01| 顶端
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回到城里,走在阿尔蒂娜左手后方的菲恩开了口。

  “阿尔蒂娜大人其实不用亲自出马。这次本是保安队的工作。”

阿尔蒂娜停住脚步,回头看着这个忠实的骑士。

“我听见保安队召集的喇叭声。很清楚又有麻烦事发生了,而且,在深夜目光锐利的飞龙能比马更快的行动也是事实。……而且从保安队长处听到的报告,才作出我亲自出去的。我哪里错了吗?”

“……”

那是一个事实。若阿尔蒂娜没有出马在双方动手之前保安队是无法到达的,而且正因为带着盖依波鲁古的阿尔蒂娜出手阻止,才能兵不血刃的解决这次纷争。

城下只要出现纷争阿尔蒂娜一定会亲自出马的。与其说他被城里的焦躁感所驱使,还不如说她对这些事乐在其中。
 
“但是……。阿尔蒂娜大人随便地出城到底不是一件好事情。”

阿尔蒂娜的茶色眼睛直盯着枪骑士。

“菲恩,你想让我——米兹太守的名字成为一个‘装饰’吗?”

“……我没有半分那样的意思,但是……”

  阿尔蒂娜转身走了。不一会儿便到达了他卧室的门前。守卫公主卧室的卫兵向她敬礼。

“晚安,菲恩。”

“请您好好休息……”

阿尔蒂娜进屋关上门。但是传来另一扇门开闭的声音……咚的一下沉重的声音。卫兵不可思议的看着菲恩。

 “有没有听到奇怪的声音。……不用进去看看吧。”

  枪骑士知道那声音的真相。但是他转过身体,安静的从那长廊折返回去。

  在寝室门前阿尔蒂娜瘫坐在地上。

站在佣兵中间的时候,心中如同潮涌。无数次站在战场上,每次感觉到憎恶的意志时,内心就会一片混乱。

……是的,就是那样。那个男人说的对。我只是用这支枪,这支地枪盖依波鲁古的力量在控制着民众而已。由力量制造的臣服……这是不对的。

我要是放弃这支枪……

她跪在那里使劲将枪握住,手剧烈的颤抖着。

我一定什么也干不了……

而且只要有这支枪,我就会一直依赖它压倒性的力量……。这个和实行恐怖政治的那个帝国又有什么分别呢……

  我只能使用武力来治理深爱着的雷斯塔和特拉基亚吗?

  赤色枪骑士的肩膀颤动起来。


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[4 楼] | Posted:2006-06-27 13:42| 顶端
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辛苦你了,其实这种工作大家都是一样的呀。

要说翻译那些名人对谈之类,很多地方完全是干巴巴的傻笑。我真怀疑日本玩家怎么看得下去这些东西。

还是去看工口更有前途……


庄子与惠子游于濠梁之上,庄子曰:条鱼出游从容,是鱼之乐也,惠子曰:子非鱼,安知鱼之乐?庄子曰:子非我,安知我不知鱼之乐?惠子曰:我非子,固不知子矣,子固非鱼也,子之不知鱼之乐,全矣。庄子曰:请循其本,子曰汝安知鱼乐云者,既已知吾知之而问我,我知之濠上也。
[5 楼] | Posted:2006-06-27 18:04| 顶端
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  **********

“阿尔蒂娜小姐!”

身着白色僧衣的少年从雷斯塔城的一间屋子的座位上站了起来。从入口进来的阿尔蒂娜快步走过去,和少年拥抱在一起。

“从利夫那里得知你要过来,还吃了一惊,这不马上赶来了。高布尔,你长高不少呢。”

“谢谢。不过比利夫要矮不少呢…….刚才被他压到脑袋下面了呢。”

阿尔蒂娜看着和在一旁和南娜站在一起的利夫笑了。

“高布尔以后会长的更高大的。最近不是刚刚变声了么。”

虽然年轻,但已经是艾达王国最高位的少年司祭将视线转向利夫。利夫轻轻一点头。

“阿尔蒂娜小姐,有很久没有见面了,有好多话想跟你说呢。南娜准备了茶水,能赏个脸吗?”

高布鲁深深的一鞠躬,而阿尔蒂娜也迎合着他幽雅的拉起裙边还了一礼。

“非常荣幸。”

公式访问周游列国的趣闻。在艾达每日的生活,和姐姐林、汉尼巴尔将军一同访问达那镇的见闻。不断地从这个金发少年的口中涌出,阿尔蒂娜听他愉快的讲述,微笑着点头。

“啊,抱歉。都是我一个人在说。阿尔蒂娜小姐过的如何,在米兹的生活好吗?”

阿尔蒂娜的脸上掠过一道阴影。虽然马上就消失了,但还是没有逃拖高布鲁的眼睛。对人心感觉敏锐的是复活之杖,并不是作为继承瓦尔基里的司祭的特殊能力。因为高布鲁就是高布鲁。

“其实也……不是很顺利,因为南北对立有很长一段时间了……要花费点时间才能相互理解这也无可厚非。”

“这样啊。……阿尔蒂娜小姐,您没有太勉强吧。”

“哎?……你认为我在勉强自己?”

“有点……您看上去很累。”

二人都沉默了一段时间。

“艾达很平静呢。……听说在那大战之后,最先恢复和平的就是艾达。”

 “因为艾达不象特拉基亚大陆那样有复杂的事情。……而且我的国家是聚集着信仰补拉基神的宗教国。民心因为宗教而团结在一起。……所以和其他国家无法相比。”

“利用宗教的统治……吗……”

阿尔蒂娜低下头。

“阿尔蒂娜小姐?”

“……这特拉基亚大陆持续着对立。……而我用武力把他……用盖依波鲁古的力量将其抑制。……我只能用这样的方法吗?……雷斯塔的人们,特拉基亚的人们,他们渴望安稳与和平的心是相同的……所祈祷的事是相同的。但是为何又纷争不止。像你的国家那样人们通过祈祷团结一心……这个国家无法通过祈祷做到吗?……最近我也考虑过……自己真的需要做的,不是握着杀人的道具盖依波鲁古出现在民众面前……而是应该以没有战斗意志的柔弱的一心祈祷和平的姿态展现于民众之前。武力只能招来更多的武力……参加前次大战的我应该明白这一点。”

如同姐弟般的关系,曾经一起起居的高布鲁明白。阿尔蒂娜朝晚的祈祷如同每日的功课一般,而且那祈祷是非常真挚的。

高布鲁轻轻的,斟字酌句的问道。

“……你莫非想要舍弃那支枪?”

“……也许……我会这么做。……使用那支枪夺走无数性命的我可能已经没有资格再站在神明的面前了……”

高布鲁微笑着。

“阿尔蒂娜小姐您应该知道的。布拉基之神不会对任何人关闭信仰的大门。”

“……高布鲁,你曾经说过在祈祷的时候听见布拉基神的宣示。……但是我再怎么祈祷也听不到啊。”



  高布鲁提起差壶将红茶突突的添入阿尔蒂娜的杯子。

“难得南娜烤了这些蛋糕。乘茶还是热的时候赶快尝尝吧。阿尔蒂娜小姐。”



  **********


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[6 楼] | Posted:2006-06-28 10:13| 顶端
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高布鲁回国后,阿尔蒂娜和弟弟们玩了几天便回到了米兹。刚换下旅行时的装束,在自己房间里安顿下来便听到敲门的声音。

  “请进。”

门打开了,是菲恩的朋友雷斯塔骑士古雷德的妻子塞尔菲娜站在那里。

  “塞尔菲娜小姐……有什么事吗?”

菲恩站在她身边。他递过一封信给阿尔蒂娜。

“是高布鲁……寄来的?”

阿尔蒂娜看了信笺的封面便用手捂住了嘴。

“没有……那个必要。”

菲恩摇了摇头。

“高布鲁殿下说阿尔蒂娜小姐非常疲惫,作为艾达的神官强烈建议您休一个长假。”

“但是……我也不是那么疲惫的啊。”

“也就是说还是有点累的吧。”

无言以对的阿尔蒂娜被塞尔菲娜又将了一军。

“有许多米兹的民众和高布鲁大人应该是同样的想法。利夫大人也很担心。请休息一下。……要听老人言哦。”

难道自己身上已经飘荡起需要高布鲁和利夫担心的悲壮气氛了吗?阿尔蒂娜感觉很不好意思。菲恩“嗯咳”的咳嗽了一下。

“请休息一下。城里除了任何事阿尔蒂娜小姐就擅自行动对于我这个辅佐的人来说压力也很大。而且高布鲁大人好象已经向前面发出了指示,若您说不去的话高布鲁大人也会觉得棘手的。”

阿尔蒂娜已经无所适从了。塞尔菲娜把手搭在她的肩膀上。

“我帮你整理行李。明天我会来送您去的。”

阿尔蒂娜无言的点点头。



  **********


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[7 楼] | Posted:2006-06-29 10:36| 顶端
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这篇的理念有点奇怪啊
我认为,兵器就是兵器,杀了无数人的和没沾过血的完全没区别,杀人的是人

什么?游戏里?当我上面说的是屁话,我当然要百斩的,口黑口黑

高布鲁 科普尔
林 琳
汉尼巴尔 汉尼拔


[ 此贴被フィン在2006-06-29 10:55重新编辑 ]

[8 楼] | Posted:2006-06-29 10:47| 顶端
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第二天,阿尔蒂娜上了马。穿着朴素的长裙,跨着不习惯的单座马鞍上牵着马的阿尔蒂娜使劲追赶着走在前面的塞尔菲娜。马背上载着最低限度的换洗衣物。阿尔蒂娜回想起送行的枪骑士的话。

(阿尔蒂娜大人,您不带上枪吗?)

(菲恩,我不是去战斗的。相反,我要去的地方可以说是和战斗处于两极的场所。)

“看,已经到了。”

塞尔菲娜走过去。在山间的湖畔有一座古老的石壁的修道院耸立着。




  和修道院长的修女说了几句,塞尔菲娜便回去了。她们给了阿尔蒂娜一套修女的衣服,并介绍给其他姑娘。有修行很长时间的,也有刚刚从礼仪学起的新人。
院长介绍时说“这段时间她将和大家一同学习神之教诲。”她实际是雷斯塔公主这件事,除了院长和山脚下村庄的村长之外无人知晓。阿尔蒂娜自我介绍时用了以前商量好的假名。这时她的脑海里全是传说中在战场上抓紧着治愈之杖奔走的母亲的容貌。

“请多关照。我叫……艾斯琳。”
 
年长的修女们虽然严格但很慈祥,年轻的姑娘们则一批一批不停的涌到阿尔蒂娜的房间来闲聊。虽然同处一室的据说是地方领主的女儿,但她是一个大方的姑娘,她们相互梳理头发,教阿尔蒂娜原本不会的刺绣,不知不觉中原本紧张的阿尔蒂娜也放松下来能够露出自然的微笑。
 
少女们很喜欢年长且温柔的阿佴蒂娜,把她当作姐姐般尊敬,而阿尔蒂娜也把少女们当作妹妹爱护。

修道院的生活虽然单调但是充实。早晨的祈祷、清扫、吃饭、信仰的学习、挤牛奶做奶酪、草药院的整理之类的修行,短暂但快乐的休息的时光、祈祷、就寝……这里既没有辱骂别人的人,也没有挥舞利器的人。
 


阿尔蒂娜在这个安静的修道院里最喜欢的地方是独立构造的非常寂静的礼拜堂。
  像是与伫立在正面的祭坛的十字架的横臂相重叠,十字架后的墙壁上装饰着一支形状奇异的金属杖。曾经询问过那杖的来历,但没有告诉她。只是说是以前拯救这间修道院于危难,为了纪念而一直供奉在那里。

从早到晚……只要有闲暇时间她必定到礼拜堂去祈祷。神学的学习也比任何人都专心。使担当教课的修女们都很高兴。阿尔蒂娜提问时一定仔细解答,并介绍相关的书籍。而阿尔蒂娜也争分夺秒得阅读甚至占用了睡眠的时间。

当将治愈之杖被交到阿尔蒂娜手中时,她的心脏都要跳出来了。

眼前有朵早上开放但现在已经凋谢的花儿在花盆里。若是能使用治愈之杖的力量,可以在短时间内使它的生命重复一次。

阿尔蒂娜专心地祈祷,将花儿托在手里挥动法杖。……但是,花儿没有任何变化。那是连科普鲁也没有预测到的。

阿尔蒂娜尝试了无数次……最后还是修女按住她的肩膀阻止了她。

“可以停止了……”


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[9 楼] | Posted:2006-06-30 11:34| 顶端
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Re: 封印の槍(搬运工劳作)

这篇的理念有点奇怪啊
我认为,兵器就是兵器,杀了无数人的和没沾过血的完全没区别,杀人的是人

什么?游戏里?当我上面说的是屁话,我当然要百斩的,口黑口黑

高布鲁 科普尔
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[10 楼] | Posted:2019-02-20 10:41| 顶端

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