雪之丞
级别: 火花会员
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所属组织: GL党
组织头衔: 换头部部长
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約 束 の 丘
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城から逃れ城下の街を荒らしていた敗残兵達を片づけ、ダーナの街が自治を回復するのを見届けてから、デルムッド達はメルゲンに戻った。その後間もなくして、アルスター制圧とレンスター奪回の報がもたらされた。手傷を負ったブルーム王はコノートへと逃れ、これでレンスター地方のおよそ半分の解放がなされたことになる。 セリス皇子はメルゲンからアルスターへと拠点を移し、今後はコノート攻略へ向けての準備を始めることになった。
レンスターを奪回したリーフ王子は、そのまま城にとどまって城下の整備にあたっていた。いずれ、このレンスターがコノート攻略の前線基地として機能することになるだろう。それまでに、さまざまな情報を把握しておく必要がある。 ナンナもまた、リーフの側で多忙な日々を送っていた。城内の事情にもくわしいナンナは、フィンと共に何かと頼りにされることが多い。てきぱきと指示を出しながら、自らも先頭にたって動き回った。
その夜も、解放軍への参加を希望する者達の名簿をまとめ、ようやく一息ついた時には月がだいぶ傾いていた。ベランダに出ると、ひんやりとした夜風が髪を揺らして通り過ぎる。 そのままほんやりと庭をながめていると、ふいに母ラケシスの事が思い起こされた。ここレンスター城には、幼い頃を母と共に過ごした思い出があった。ブルームによって占領されるまでのわずかな間だったが、今となってはかけがえのない日々だった。
ナンナは胸のペンダントを手に取った。イザークへ旅立った母から託されたものだ。中には一人の美しい青年の肖像画がある。ラケシスの兄エルトシャン王の肖像画だと、母から聞いていた。 ノディオンの王であった兄のエルトシャンのことを、ラケシスはよくナンナに話して聞かせた。遠くを見るようなまなざしでエルトシャンのことを語る時、母は本当に幸せそうだった。あまりに何度も聞かされるため、幼いナンナはエルトシャン王が自分の父親なのかと勘違いしていたこともある。
その母がイザークへ旅立つ朝、それまで肌身はなさず身につけていたペンダントを自らはずずと、ナンナの首にそっとかけたのだ。ラケシスはひざを折り、ナンナと視線を合わせると静かな声で語り掛けた。 「ナンナ。お母さまはこれからナンナの兄さまを迎えにイザークへ向かいます。でも、イザークは遠いわ。すぐには帰って来られないかもしれない。だからこれからは、あなたがお母さまのかわりにアレスを探してね」 そう言って、ペンダントと共に一通の封書をナンナに託した。エルトシャン王からその息子アレスに宛てた手紙だという。ラケシスはこれをアレスに渡すために、ずっとレンスターにとどまっていたのだ。 母の言葉をナンナは心に刻み込んだ。それ以来、母との約束を果たすためナンナはアレスの行方を捜し続けた。しかし帝国軍の追求の目を逃れながらのことでもあり、とうとう現在に至るまでアレスを見つけることはできなかった。
どうして母はあれほどまでにアレスの事を気にかけていたのか、ナンナはずっと不思議に思っていた。自分の甥だからというよりも、エルトシャン王の子だからというふうにナンナには感じられた。 ラケシスはナンナの父のことはあまり語ろうとしなかった。話してくれるようせがんだこともあったが、悲しそうな母の顔を見て以来聞くことができなくなってしまった。 母が本当に愛していたのは、もしかして兄であるエルトシャン王なのではないだろうか…。いつの頃からか、ナンナの心にそんな疑惑が芽生えるようになった。 母を異にするとはいえ、血のつながった兄と妹が結ばれることは許されない。その苦しさから逃れるために、母は父と結婚したのではないだろうか…。
ありえないと何度も否定しながら、いつのまにかその考えは次第にナンナの中で大きくふくらんでいった。 しかし、もうその答えを聞くこともできない。ラケシスはイードの砂漠に消え、イザークにたどり着くことはなかったのである。
「お母さま………」 ふいに目頭が熱くなり、涙がひとすじ頬を伝った。 その時、部屋の扉を叩く控えめな音がした。もう夜も遅い。不審に思いながらもあわてて涙をぬぐうと、扉の方へ向かった。
「デルムッド兄さま…」 そこには、数日前に再会した兄のデルムッドが立っていた。 「いつこちらに? 兄さまはアルスターにいらっしゃるはずじゃ…」 「どうしてもおまえの無事な顔が見たくて、馬を飛ばしてきたんだ」 「兄さま…」 自分を気遣ってくれる優しい瞳に、ナンナは胸がいっぱいになった。母と別れてからは、誰かに頼ったり甘えたりすることなく生きてきた。一番身近にいた大人であるフィンは、やはりリーフ王子を中心に行動していたし、どうしても遠慮があった。こうして真っ先に自分のことを思ってくれる存在に、心が暖かくなる思いがする。
「嬉しい…。わたしも兄さまとゆっくりお話がしたいと思っていたの」 ナンナはデルムッドを部屋に招き入れた。妹と向かい合ったデルムッドは、その瞳に涙のあとを見つけた。
「もしかして泣いていたのか? 何があったんだ、ナンナ」 「なんでもないの。少し、お母さまのことを思い出しちゃって…」 「母上のことを?」 「兄さまは、ラケシス母さまのこと覚えてる?」 しかし、デルムッドは残念そうに首を振った。 「いや、ほとんど覚えていない。俺達がイザークに来たのは、ものごころつくかつかないかの頃だったからな」 「そうよね…。 わたし、お母さまはイザークにいらっしゃると思っていたから、きっとまたお会いできると思っていたの。そうしたら、聞きたいことがたくさんあったのに」 「聞きたいこと?」 「ええ。一番聞きたかったのは、お父さまのこと…。ラケシス母さまは、お父さまのことはあまり話してくださらなかったの。お父さまがシグルド様の軍の戦士だったことや、エルトシャン王の友人だったということはフィンから聞いたことがあるけど…」 「父上のことならほんの少しだけ覚えてるよ。顔ははっきり思い出せないけど、とても大きくて力強い存在だった」 「そう……」 「俺も、父上のことはオイフェ様やレヴィン様から聞いたんだ。オイフェ様の話では俺はかなりの父親っ子だったらしくて、いつも父上の側を離れなかったそうだ。父上も、まだ満足に歩けない俺を馬に乗\せてよく遠出をしたりしたらしい。おかげで歩くより先に乗\馬を覚えたという話だ」 「まあ…。でも、兄さまはほんとに乗\馬が巧みでいらっしゃるものね」 ナンナの顔に、微笑が浮かぶ。 「元々は傭兵としていろいろな部隊を渡り歩いていた父上がシグルド様の軍にとどまったのは、母上と出会ったからなんだ。父上は、エルトシャン王から母上のことを頼まれていたそうだ。何かあったら、自分のかわりに守ってほしいと」 「そうだったの」 それは初めて聞く話だった。それでは、二人の出会いにもエルトシャン王が係っていたのだろうか。
「じゃあ、お父さまもアレスのことはご存知だったのかしら…」 「アレス?」 独り言のようにつぶやいたナンナの言葉をデルムッドは聞き逃さなかった。 「ナンナはアレスを知っているのか?」 「会ったことはないわ。でも、ずっと探し続けていたの。元々、お母さまがレンスターに来たのは、アレスを探すためだったのよ。そしてイザークに旅立たれる時に、これからはわたしにアレスを探すようにと言い残していかれたの」 デルムッドは言うべきかどうか迷っているような顔をしたが、やがて決心したように話しはじめた。
「実は数日前、アレスに会ったんだ」 「えっ!! どこで会ったんですか!?」 「ダーナ軍の傭兵部隊の中に彼はいた。事情があって隊を抜けようとして、追手と戦っているところを偶然俺達が助けたんだ」 「まあ……!」 ナンナは息をのんだ。あんなに探しても見つからなかったアレスの情報が、こんなところで聞けるとは。
「今は解放軍と共にアルスターにいる。セリス様ともお会いになったはずだ」 「わたしもアレスに会わせて下さい。わたし、どうしても彼に渡さなければならないものがあるんです」 しかし、デルムッドはゆっくりと首を横に振った。 「いや。会うのはもう少し待ったほうがいい。自分の父をシグルド様に殺されたと誤解していて、我々にもあまりいい感情を持っていないようなんだ」 「そんな!」 「今会っても、辛い思いをするだけかもしれない。いずれ分かってくれるだろうが、それまで時間を置いた方がいいと思う」
自分を気遣ってそう言う兄に、ナンナはそれ以上強く言えなかった。 結局、アレスの話はそれきりになった。その夜二人は、お互いが過ごしてきた日々のことについて長いこと語り合い、遅くまでナンナの部屋の明かりは消えなかった。 そして明け方近く、再びアルスターへと引き返していくデルムッドの姿があった。
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[25 楼]
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Posted:2004-05-22 15:57| |
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