雪之丞
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>>導かれて 巡礼者シリーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【三章・過ちの日】
泣きながらフィンの元を飛び出したナンナは廊下を走り抜けてテラスへと辿り着いていた。
後ろからデルムッドが追いかけてくる。
「ナンナ!」
困ったような声で名前を呼んだ。
「・・・お父様は・・・とても冷たい人だわ・・・」
「ナンナ・・・でも父上は母上を愛していないと言ったわけではないよ。ただ、間に立ち入る
なと・・・・」
「立ち入る!?どうやって立ち入るの・・!?お母様はもういないのよ・・・」
白い頬にまた涙がつたう。すると何かやさしい風が頬を撫でるのを感じた。
「これは・・・・・・・フィンとラケシス・・・・・ではないな・・・・・・・・・・・」
はっと声のする方向に振り返る。立っていたのは緑の髪の吟遊詩人だった。
「レヴィン様・・・」
デルムッドがレヴィンの名前を呼ぶ。
ナンナは初めて会うのでどうすればよいかわからなかった。でも気になることがある。
「・・・今、フィンとラケシスとおっしゃいましたか?」
「あぁ、そう言ったよ、ナンナ。」
自分の名前をレヴィンが知っていたことに一瞬驚くいたが話を続けた。
「・・どうしてですか?それに・・・何故わたしがナンナだってわかるのですか?」
「それは、お前達がフィンとラケシスによく似てるからさ。ナンナ、特にお前はラケシスに良く
似ているよ。さっき遠目でお前達を見たときは驚いた。昔みたいにフィンとラケシスが一緒
にいると思ったから」
吟遊詩人の顔にはあまり表情はない。だが少しやわらかく見えた。
「昔みたいに・・・?お父様とお母様の昔をレヴィン様は知っていらっしゃるのですか?」
「あぁ、知っているさ。昔、共に戦った仲間だからな」
言葉にナンナは驚いた。
「・・・あの・・・」
ナンナはレヴィンに真剣な眼差しを送る。どうしても聞きたい事がある。
「・・・・お父様は・・・・お母様を愛していらっしゃていたのですか・・・・?」
「・・・愛していたから、今、ここにお前とデルムッドがいるんじゃないのか?」
「・・・それは・・・そうなのですけれども・・・」
ナンナが俯いてしまう。
「・・・どうした?何かあったのか?」
レヴィンがやさしい声で尋ねる。
俯いているナンナに変わってデルムッドが状況を説明した。
「そうか・・・」
デルムッドから話を聞いて納得する。
「それで、ナンナは不安なわけか・・・」
「当然です・・・!お父様は何も話をして下さらない・・・不安が募るばかりで・・・」
ナンナが顔を手で覆って泣き出す。
レヴィンはその姿にふむ・・・・と一瞬困ったようだったがすぐに口を開いた。
「・・・ではナンナ、お前の父と母の昔の話をしてやろうか?」
「昔の・・話・・・?」
「そうだ。それが直接お前の不安をなくしてくれるかはわからないが・・・何も知らないより
はいいだろう?」
「・・えぇ、是非・・・是非聞かせてください・・・!」
◇ ◇ ◇
時を同じくしてフィンの部屋。
今、フィンは時をさかのぼり過去に思いを馳せていた。
そう、あれはラケシスがイザークへと向かう日の前日。
できる事なら戻ってもう一度やり直したいと何度も願った日・・・。
◇ ◇ ◇
フィンの中では、ずっと嫉妬と不安の炎がくすぶっていたのだと思う。
出会ってから何年もの間、口に出すことはななかったけれど・・・
『アレスが見つからない・・・何故・・・義姉様はレンスターに戻られたはずなのに・・・』
視線の先には不安そうなラケシス。
『無事でいるのかしら・・・・・・・』
その声は涙声で。
『・・・アグストリアの再興にはあの子なくしてありえないわ・・・』
フィンは返事をしなかった。
『・・・フィン?・・・どうしたの?』
ラケシスの金髪が風に揺れる。
『・・・・・・アレス王子を探すのは本当にアグストリアのためですか?』
『えっ・・・・?』
(私は何を言おうとしているんだ・・・・・・愚かな事を言ってはいけない・・・・!)
心ではわかっているのに・・・体が勝手に動いている。
『彼は・・・エルトシャン王の子だからでは・・ないのですか・・・』
(やめてくれ!ずっとずっと我慢してきたんだ・・それを言ってはいけない・・!)
『ラケシス・・・貴女はエルトシャン王のことを本当は・・・愛して・・・・・』
ラケシスの目が大きく開かれて自分を見ている。
フィンはラケシスの瞳に過去を見ていた。
―――・・・エルト兄様あれほどお止めしたのに・・・・そのうちにノディオンもこんなことに・・・
幽閉された兄をひたすら心配していたラケシス。
そして、王が亡くなった日、天幕の向こうに聞いたラケシスの空を裂く様な悲鳴。
―――兄様に・・・会いたい・・・会って・・・謝りたいの・・・
―――耐えられない・・・!死んでしまいたい・・・!
死を望んでいたラケシス。
フィンの中で何かが溢れ出していた。
『わ・・私が兄を・・・一人の男性として愛していると・・・そう、思っているの・・・?』
ラケシスが震えているのが見える。
(早く・・早く否定しないと・・ラケシスが悲しんでいる・・・!)
でも身体が動かなかった。
もしかすると身体のほうが正直なのかもしれない。
心は嘘をついているのかもしれない。
でも、次の言葉は言ってはいけない、それだけはわかっていたのに・・・
わかっていたのに・・・・・!!
『・・・・・・そうだと言ったら・・・・?』
ラケシスがフィンを見ていた。
きっと自分は冷たい顔をしている。
ラケシスは涙を流さなかった。そのかわり、どこか苦しいような、悲しいような表情をして、
そして、そのまま何も言わずにその場を去った。
ラケシスがイザークへデルムッドを迎えに行くと言い出したのはその日の夜だった。
フィンはそれを反対しなかった。
ラケシスの瞳を見ていたくなかった。
嫉妬の次にフィンを襲ったのは罪悪感。
イードは危険だがそれでも行くのかと尋ねてやることしかできなかった。
その言葉でラケシスはあきらめることはもちろんなく、早朝、必ず戻るからと、そう言って
旅立っていった。
――――大地の剣を置いて・・・・
気づいたのはラケシスを見送り部屋に戻った時だった。
机の上に置かれた大地の剣。そして傍に置かれた手紙。
――――あなたを守ってくれますように。
エルトシャン王の形見だった大地の剣。彼女は肌身離さずずっと持っていたはずだ。
「あなたを守ってくれますように・・・」
つづられた文字を声に出す。
涙があふれた。
自分の愚かさに。
彼女の想いを理解してやれなかった自分に――――
◇ ◇ ◇
フィンは回想から目覚める。
頬に涙がつたっていた。
(ラケシス・・・わたしは・・・)
ラケシスがフィンの元を去ったあと押し寄せた後悔。
それは今でも止む事は無い。
でも、それが自分にはふさわしいのかもしれない。それだけの罪を犯したのだから。
国がフィンを必要としていて、探しに行くことすら叶わなかった。
謝る事もできない・・・・名前を呼ぶことも・・・・・・
だから・・・今はあなたの導きに従う・・・それが、せめての償いだから。
フィンは内ポケットから、ノディオン王家の紋章の入った手紙を取り出した。
>>導かれて 巡礼者シリーズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【四章 ・父と母】
「そうだな・・・話とは言っても・・・」
フィンの昔の話を聞かせてやるといってテラスにある椅子に3人座ったのはいいものの、
レヴィンは何を話してやればよいかわからなかった。
フィンとラケシスの話・・・
レヴィンの記憶中での二人はいつだって幸せそうだった。
だが、今その二人は一緒にはいない。
お互いが手を一時だったのかもしれないが手放した。
その手放した理由・・・それにレヴィンは気づいていた。
(ラケシスはレンスターに行ったあと、アレスを捜したはずだ。彼はエルトシャン王の子・・・
たとえあのときすでに獅子王が亡くなっていたとはいえ、フィンの心は穏やかではなかった
だろう・・・)
レヴィンはいつだって風の精霊と対話をしていた。その風の精霊はいつだったかフィンの
心の暗い部分をそっとレヴィンにささやいてきていた。
(・・・でもラケシスの大事な身内なのだと、そう、心に言い聞かせようとしたに違いない。
フィンの中にはずっと疑惑が同居していた・・・もし、彼の不安が溢れ出てしまったのだと
したら・・・)
ズキンと胸が痛む。
フィンはずっとラケシスと一緒だった。
だから余計に獅子王の存在が心についてまわった。
そして、ラケシスはフィンを愛していた。
フィンの不安に彼女が気づいていたのかどうかは今となってはわからない。
でも、彼女は知っていたとしてもどうすることもできなかったのではないか・・・
亡き人を嫌いになれるわけがなく・・・ましてや忘れる事など。
フィンはラケシスを愛せば愛するほどエルトシャンへの彼女の思いが見えなくなっていった
に違いない。
そしてそれは避けられないことだったのだ・・・たとえ真実はただ純粋な兄王への憧れでも
フィンの瞳にはどうしてもそんな風には映らなかった・・・
ラケシスを愛していたから――――
(惨いな・・・・・)
レヴィンはそう思う。
(愛すれば愛するほど・・・お互いにどうすればよいかわからなくいったのだろう・・・本当は
ずっと一緒にいたかっただろうに・・・)
緑の髪を風が揺らした。
「・・・レヴィン様・・?」
「あ・・・あぁ、すまない、何を話そうか悩んでいたんだ」
適当にごまかす。
(子供達には・・・エルトシャン王のことは言うべきではないだろうな。フィンが立ち入るなと
言ったのは当然だ・・・もはや子供たちには関係のないことだ。デルムッドとナンナが
アレスとぎくしゃくする必要はないのだから・・・・)
◇ ◇ ◇
「お前達の父親と母親は・・・本当に仲がよかったよ」
「そんなにですか?」
「あぁ。その中でもシレジアのことはよく覚えているよ。ラケシスは結局亡国の王女となって
しまったわけだけど・・・・フィンが傍にいて幸せそうだった」
「・・・お母様が・・・・」
「フィンもラケシスが自分の傍にいてくれるようになって、心から喜んでたのが端から見て
てもわかったよ。あいつは今と違って当時は見習の騎士。ラケシスとは身分が違いすぎ
ていた」
「そうだったのですか?」
ナンナはびっくりしている。
彼女の中での父はいつでも立派な騎士だった。見習のころなど想像がつかない。
「・・・国も身分も違って・・・片方は国の復興をしょってる亡国の王女で、もう片方はいつ、
レンスターに帰ることになるのかわからない見習の騎士で、それでもあいつらはお互いの
手をとったんだ・・・必要だったから・・・」
必要だったから・・・・
その言葉がナンナの心に響く。
(じゃあどうしてその手を離したのですか・・・・・?)
心の中で父に問う。
でも答えはない。
「フィンがレンスターに帰る事になって、ラケシスはそのままシレジアに残った。みんなが
それでいいのかと聞いたら、ラケシスはお互いの務めを果たすことにしたのだと言って
たな。さびしいんじゃないのかってからかったら、今度レンスターに行って驚かしてやる
からいいと言って笑ってたっけ・・・・」
だんだん話をしていて自分も懐かしくなってくる。
「そのあとすぐに妊娠してることがわかって、ラケシスはとても嬉しそうだった。早くフィンに
会わせたい・・・そう、言ってたよ」
「はやくあわせたい・・・」
デルムッドが呟く。
「そうだ。ラケシスがイードを越えてお前を迎えにいったと聞いた時、おれは驚いたけど、
同時に納得もしたよ。あの時のラケシスの言葉を覚えていたからな」
「そうなのですか・・・」
胸がじんと熱くなる。
「・・・ナンナ」
「はい、なんでしょう?」
「お前は、騎士としてのフィンをどう思うか?」
「え・・・それは・・とても立派な方だと・・・」
「そうだ。あいつは立派になったよ。大きくなった。・・・でも、それまでに払った代償も大き
かったんだ」
「え・・・?」
「それは、たとえば主君夫妻がイードで戦死したとき・・・」
「たとえば愛する妻がバーハラの悲劇で生死不明だったとき・・」
「そしてたとえば小競り合いが続いてる中で妻が砂漠に旅立つとき・・・」
「あ・・・!」
「そういったとき、国がフィンを必要としていたから、じっと国で一人待つしかなかった。
・・・あいつは騎士だから」
いったんレヴィンは言葉を切る。そして再び口を開く。
「愛する者のためにすべてを投げ出すのは美談だが、それは美談にすぎない。騎士は
なかなか厳しい生き物だ。主君のために、主命のために心を凍りつかせることが求めら
れる時もある」
ナンナが下を向く。
「おれは確かにナンナが言うように何故、フィンがラケシスを一人で行かせてしまったのか
わからない。でも、ただ一つだけわかることがある。」
レヴィンがナンナの瞳を見る。
「それは、フィンが今でも行かせたことを後悔し続けている事。つまり今でもラケシスを
愛しているということだ。」
「レヴィン様・・・」
風が髪を揺らす。レヴィンは一番言いたかったことを口にした。
「・・そして戦時中だったから・・・その感情を殺してきた事も・・・」
「!」
ナンナの中で何かが繋がった。
―――どうして・・・気づかなかったのだろう・・・
いつのまにか、父が母を愛していないのではと疑う心ばかりが自分を占めてしまって、
父の立場に立って考えていなかった・・・
「わたし・・・つい、この間まで・・・ずっとお父様が感情を殺すしかなかったってことを
わかっていたのに・・・・」
父親に良く似た青い瞳から涙がこぼれる。
「お前は動揺していたんだ・・・今までは不確かだが存在していた母が、今日消えたから・・・
行き場のない思いが溢れたんだ」
そういいながらレヴィンが頭をなでてくれる。
今日・・兄から母がイザークに着いてないことを聞かされて・・・
頭の中で母が行方不明から死亡になった。
母がいなくなったのを認めたくなくて・・・
誰かに文句を言ってやりたくて・・・・
父親をいもしない犯人に仕立て上げた・・・
「・・・わたし・・・お父様に酷い事を・・・・」
顔を手で覆う。
「ナンナ・・・そんな泣くなよ・・・父上もきっとわかってくれているよ」
デルムッドが心配そうにナンナを覗き込む。
その姿を見て、レヴィンは微笑ましいと思いながら立ち上がった。
「ナンナ、デルムッドの言うとおりだ、そんな泣くものじゃない。お前には立派な父親がいて、
そうやってお前を心配してくれるやさしい兄がいるのだから。彼等のためにも微笑まない
とな?」
「・・・は・・い・・・・・」
しゃくりあげながらも頷く。
「・・・いい子だ。じゃあナンナ、最後にいいことを教えてろう」
「・・・いいことですか・・?」
ナンナが涙目でこちらを見てくる。レヴィンは微笑んだ。
「そうだ。それはな――――
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[147 楼]
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Posted:2004-05-24 09:15| |
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