雪之丞
级别: 火花会员
编号: 18260
精华: 1
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配偶: 单身
火 花 币: 2062 HHB
组织纹章:
所属组织: GL党
组织头衔: 换头部部长
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最后登陆:2012-05-28
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【 第五話 】
偵察に向かっていたデューが常にない真剣な表情で戻ってきた。 城門に立っていた守備兵が、デューとともに馬を駆っていた銀の髪の女性を不審に思い立ち止まらせたのだが、「その人は仲間だよ、それよりはやくシグルド公子に会わせて!」というデューの珍しい剣幕に、入城を許してしまったのだ。 デューの帰還はノディオン城内にすぐに伝わり、シグルドたちが彼を迎えた。 デューの情報はこれから先の軍の進路を決める重要なものになるからだ。
「あなたは……?」 初めて見る銀の髪の女性に、失礼にならないようにノイッシュは声をかけた。 その場に居た者たちの心情を代表した台詞に、リヴェナはにっこりと微笑んだ。 「初めまして、私の名はリヴェナ。旅の占い師をしているのですが、このほどエルトシャン王のことを聞き、微力ながらお力になれればと思って参じた次第です」 デューにしたものよりも少しだけ詳しい説明をして、最後にリヴェナはシグルドの方を向いて軽く一礼する。 銀色の髪の毛はディアドラの紫がかった神秘的なものとは違い、光の加減によって乳白色に映っている。 デューはリヴェナの隣りに立って、シグルドに紹介をした。 「リヴェナさんはアグスティの情報をおいらに教えてくれたんだ。作戦会議が必要だよ、アグスティ城から正規軍が出撃するんだ」 デューの言葉に周囲の者たちは息をのむ。 「本当なのか、デュー!?」 ジャムカの問いに頷き、言葉を続けた。 「しかも、やっぱりシレジアのペガサスナイトも参戦してる。ペガサスナイトの目標は、ノディオンじゃなくてエバンスなんだ!」 「…何だと…!?」 シグルドは大きく目を開いた。
「エバンスには俺が行く。ペガサスナイトたちは俺と同じシレジア人だからな」 即座に開かれた作戦会議の場で、第一声を放ったのはレヴィンだった。 常に人を食ったような笑みを見せている彼は、しかしこのとき鋭い眼光でシグルドを見つめていた。 「だが、君ひとりでは……」 「アグスティの正規軍がこの城に向かっているんだ。余分な兵力は割かない方がいい。エバンス城にはまだ兵士が残っているんだろう?」 ためらうようなシグルドの言葉をピシャリと遮る。 アグスティ城のシャガール王が保有している兵士は騎馬兵と重装歩兵からなっている。そのうちの騎馬兵が、先攻部隊として陣を構え、ノディオンに進軍してくる。その数はおよそ三百。 わずか百人にも満たないシグルド軍が立ち向かうのは、数字の上だけでもかなり困難であった。 レヴィンはそのことを指摘するのだ。 「だが、いくら同郷の騎士だからとはいえ、危険なことには変わりがない。相手はペガサスナイトだ、弓兵をひとり連れて行った方がいい」 提案するのはアイラ。 「では、私が……」 進み出たミデェールに、しかしレヴィンは首を振った。 「俺にはエルウィンドがある。この魔法よりも速く俺に攻撃できる者はいないさ」 懐から取り出した魔道書を持ち上げてみる。 「だが……」 まだ少しばかりためらっているシグルドを、オイフェが見上げた。 「エバンス城にはアーダン殿たちがいらっしゃいます。守備に入ったアーダン殿に勝てる者はそうそういないでしょう」 オイフェはそう言って、一度周囲を見渡した。 「それより気になるのはマッキリー軍です。主君であるシャガール王が挙兵をしたのですから、立場上マッキリーが傍観を決め込むわけにはいかないはずです。アグスティ軍がマッキリーを南下したところで、背後の要としてマッキリーも陣を敷くと見て間違いないでしょう」 「では、我々はアグスティ軍と戦った後でマッキリーとも戦うというわけか」 キュアンの言葉にオイフェは頷いた。 「おそらく疲弊した我々を叩くつもりなのでしょう。そして、アグスティ城にはまだ戦力が残っています。エルトシャン王も」 冷静なオイフェの言葉はまだ少年の彼には不釣合いで、しかし有無を言わせぬ説得力があった。 「エルト兄さま……」 会議に参加していたラケシスが思わず呟く。 「はい、エルトシャン王はアグスティ城に捕らわれておいでです。今はまだご無事でしょうが、我々が勝利を得るごとにエルトシャン王の危険は増えていきます」 「要するに、エルトシャンは人質ってわけか」 妹であるラケシスの前で、遠慮なく言ってのけたのはベオウルフ。 彼は今までは作戦会議と呼ばれるものに参加したことはなかったのだが、今回はシグルドに請われて席に並んだのだ。 いまだにベオウルフに確執を持つノイッシュが、気遣いを見せないベオウルフにちらりと目をやった。 「エルトシャン王の御身についての危惧は、今は必要ないかと思います」 人質が本当に危険なのは、我々がアグスティ城に攻め込む寸前です。オイフェは内心の考えは口に出さずに、机の上の地図を指差した。 「当面はアグスティ軍の撃破のみを考えましょう。エバンス城はレヴィン殿とアーダン殿たちにお任せしてよろしいかと」 作戦を立てるのはオイフェの役目だ。しかし、実際の決定を下すのは指揮官であるシグルドの役目。オイフェは越権行為にならないような言葉を選んで、シグルドにそう提案した。 「わかった、オイフェの言う通りにしよう。レヴィン、どうかよろしく頼む」 「よしてくれ。俺はただシレジア人が向かってきたから行くだけなんだ」 一介の楽師に頭を下げてくる公子に、レヴィンは苦笑する。 そして、シグルドの声音は心底からレヴィンたちの無事を祈っていることが感じられるのだから、不思議なものだ。この公子は多くの者がそうであるような、身分の上下と命の価値を比例させる考え方を持ち合わせていないらしい。 「では、今からはアグスティを迎え撃つための作戦を決めようか」 会話が一段落したところを見計らって、キュアンがシグルドたちを見回した。 「そうだな」 シグルドが頷いた。
シグルドたちがアグスティの先攻軍迎撃のための作戦を練っている間に、レヴィンはエバンス城に向かうための準備をしていた。 とはいえ旅行ではなく戦いに行くのだから、持つ物は限られてくる。手早く薬草などを袋に詰めてしまうと、レヴィンは厩で良馬を物色する。エバンスまでは急げば六時間ほどで着く。アグスティを発ったペガサスナイトよりも早く、彼はエバンスに着くつもりであった。 「レヴィンさん」 聞きなれない女性の声に振り返ると、いつの間に入ってきていたのだろうか、つい先程仲間になった占い師が立っていた。 「ええと、リヴェナ、だったか。何か用かい?」 女性専用の笑顔でにっこりと応じると、リヴェナは同じようにほほ笑んで、レヴィンに近付いてきた。 「アグスティ軍に参加したペガサスナイトたちは、シレジアの王子を探すためにこのアグストリア諸公国連合まで来たのです。それを、シャガール王に利用されている。そのことをどうぞ覚えておいてください」 リヴェナの言葉にレヴィンは馬に鞍を乗\せる手を一瞬止めた。 「……あんたは知っているらしい」 修飾語を抜いた言葉だったが、リヴェナは頷いた。 「私は旅をしています。シレジア王国にも数年滞在していましたから」 「そうか、それでか」 表面上は納得したように頷いて、レヴィンは馬の手綱を引いた。準備は整った、となれば後はエバンスに向けて出発するだけである。 「お気をつけて」 「ああ、あんたも。それと、情報をありがとう」 厩を出て、レヴィンはすぐに騎乗\した。 軽く礼をしてから馬の腹を蹴る。そのまま城門に向かう後ろ姿をリヴェナはしばらく見た後、城の中へ引き返して行った。 そろそろ軍議が終わっている頃であろう、と。
*
ノディオンの最も大きな南門の中に、騎兵を中心とした兵士たちが陣を組んで並ぶ。 東門には同様に、歩兵を中心とした兵たちが集結した。 門は両方とも固く閉じられており、外から見る者には篭\城の構えのように感じられたであろう。 戦を前にそれぞれ真剣な面持ちで指揮官の合図を待っている南門では、しかし場違いとも言えなくもない二人の声がした。 「では、わたくしは戦には出られないのですか!?」 「当たり前だろう。あんたはさっき俺が言ったことをもう忘れたのか?」 「しかし、相手はアグスティの正規軍ですよ!?」 「だからだろうが。あんたが居たら邪魔で戦えねぇ」 ノディオンの姫にここまでぞんざいな口が利ける男は、大陸広しといえどもこの男だけかもしれない。 ベオウルフは整列した陣の最後尾で、頭を軽く押さえながらラケシスを見下ろしていた。 「この戦いの責任はわたくしにあるのに、そのわたくし自身が安全な場所にいることは出来ません」 「それはもう聞いた」 本当に、何度この台詞を聞いただろうか。 責任から逃れないその姿勢は評価に値するが、しかしもう少し身の程をわきまえろよ。 ベオウルフはそう思わずにはいられない。 彼らから少し離れたところでは、ノディオンのクロスナイツの一員でもあるイーヴたちがベオウルフを睨むように立っている。 ベオウルフに談判に行ったラケシスに付いて行こうとして、彼女に拒否されたために三人揃って遠くから眺めている姿は、傍から見ていると少しばかり滑稽でもあった。 「いいか?あんたの責任はシグルド公子たちを招き入れてハイライン城を制圧したところで終わってるんだ。シグルド公子はあんたとは別に、グランベルからの命令を受けて進軍を開始した。つまり、この戦いの最終責任はあんたが取るんじゃない」 どれほど理屈に適っていようとも、ラケシスはまだ納得がいかないような表情をしている。ベオウルフはため息をついた。 「言っただろう。あんたは俺に剣を教わるとな。だから俺が良いと言うまでは戦には出さねぇ。自分で言ったことには責任を持ちな、お姫さん」 ラケシスの責任感を逆手にとってベオウルフはピシリと言った。さすがにラケシスは口を噤んだ。 「……わかりました」 たっぷり数分経ってから、ようやくラケシスはそう言った。 「では、必ず無事で帰って来て下さい。あなたはわたくしに剣を教えなくてはいけないのですから」 言うだけ言って、ラケシスは走って行ってしまった。 回復魔法が使える彼女は、東門の部隊の後方支援を言い充てられていた。おそらく持ち場に戻ったのだろうが…。 「無事に帰ってこい、かよ」 言われたベオウルフは、その内容があまりにも意外であったためにしばらく何も言えなかった。ようやく口を開いて、そう呟く。 一介の傭兵であるベオウルフは、誰かに無事を望まれたことなどなかったのだ。それが、たとえ剣を教えるためであったとしても。
「アグスティ軍、東門より5キロの地点に陣を敷きました!ゆっくりと前進してきます!」 物見塔からの報告をシグルドは受ける。 作戦を考えたのはオイフェでも、実際の勝敗は指揮官にかかってくる。 南門の前列でキュアンとともに馬を並べていたシグルドは、「わかった」と応じてから隣りのキュアンと互いに頷きあった。 「東門の弓兵部隊、攻撃を開始しました!」 報告の第二陣が届く。 歩兵部隊が待機する東門の城壁から、ジャムカが率いる弓兵が一斉にアグスティの騎兵軍に矢を放ったのだ。 しかし、いまだ互いの距離は遠い。この距離を届かせることは難しい。 「無駄な矢を使うな。本番に備えろ」 ジャムカは指示を出す。 そうして遠目が利く彼は、平原を陣を崩さすに整然と進軍してくる騎兵部隊を眺めた。 「アグスティ軍、東門到着!城門に取り付きました!」 堅固に守られた鉄門を取り壊すことは容易ではない。馬上からアーチナイトたちが矢を放つ。 その半分以上が城壁に遮られるが、残りの矢が城壁を越えて場内に侵入する。 頭上から降ってくる矢をかわしたり、剣で叩き折りながら、東門の歩兵たちは合図を待った。 「デュー、大丈夫?」 「もちろんだよ」 アゼルが声に、デューは元気よく頷いた。実際に戦かう者として戦場に出るシグルド軍の中で、デューは最年少であった。 元々は盗賊\であったデューは、それなりの危険にも慣れているらしいのだが、しかしアゼルはそれでもこの年少の少年を気遣った。 アゼルはヴェルトマー公爵家の公子であり、現在若くして公爵位を務めるアルヴィスの異母弟でもある。複雑な事情をいくつも抱えるヴェルトマー公国の公子として、彼は周囲の人々の心情を敏感に察知し続けてきた。 彼の心優しい気質は、それまでの生活環境が形成したものと言っても良いだろう。 「アゼルさんも、気を付けてね。アゼルさんの魔法は凄いって知ってるけどさ」 そう言って笑うデューは、ぐるりと周りを見渡した。 アグスティの兵士たちに比べ、シグルド軍の戦力ははるかに少ない。しかも、戦い慣れた正規軍と違い、平均年齢の若いこの軍の内の約半数がこういった戦争に慣れていない者たちなのだ。 今までずっと勝ち続けてこれたのは、ここの実力が優れていたからなのか、作戦の力なのか、それとも他の要因なのか、デューには分からなかった。 「南門が開いたな」 デューの頭上でホリンが呟いた。 そのすぐ後に何十もの馬蹄の響きと兵士たちの声が聞こえる。 東門に意識を集中していたアグスティの兵士たちの真横から、南門に待機していた騎兵たちが襲撃したのだ。 歩兵たちが待機する東門の外で、戦闘が始まる。 アグスティ先攻軍の騎兵を指揮する隊長たちは、しかしすぐに態勢を立て直す。ノディオン城で最も大きい南門に兵力が蓄えられていることを、あらかじめ予想していたのだろう。 「全軍突撃!」 大きく手を上げて、真っ向からシグルド軍にぶつかる。 アグスティの騎兵三百に対してシグルド軍の騎兵は、ノディオン城に駐屯していた兵を合わせても七十騎足らず。作戦などなくても普通にぶつかり合えば、アグスティ軍の方が圧倒的に有利なのだ。 現に、三十分も経たないうちにシグルド軍はゆっくりと後退を始めている。 数と勢いに押されたのだと判断したアグスティ軍の隊長は、更に軍を進めた。混戦となるかと思いきや、シグルド軍がそれほど隊列を乱さないために列と列のぶつかり合いとなっている。 「再び門に入って篭\城の構えでもする気か…?」 先の戦いでマッキリー軍が攻め入ったとき、ノディオン軍は篭\城の戦法を取った。隊長たちの頭の中にはそれがある。 「城に篭\られるとやっかいだ、奴らを中に入れるな!」 指示が飛び、アグスティの騎兵たちは更に勢いを増す。 馬の腹を蹴り、速度を上げて突撃をし始める。 そうして、それまで横の列であったアグスティ軍の隊列が、乱れた。 「歩兵部隊、出撃!」 ジャムカの鋭い声に、東門の鉄の扉が勢い良く開かれた。 ホリンやアイラといった剣士を前列にして、それまで東門で待機していた部隊が一斉にアグスティ軍の背後を突いた。 シグルドたち騎兵軍に突撃をかけていない、後列に残っていた兵士たちがまず彼らの剣の餌食となった。そして、虚を突かれて一瞬後ろを振り返った騎士たちを、後退を止めて猛然と向かってきた南門の部隊が襲った。 「射て!」 城壁の上ではジャムカが腕を勢い良く下ろし、弓兵たちが矢の雨を降り注いだ。 アグスティ軍は完全に挟撃され、この時点で勝敗が決した、と、物見塔で全てを見ていたオイフェは確信した。 それより二時間ほどで、アグスティ軍は敗走するのである。 三百人いた騎兵は四十六人にまで減っており、対するシグルド軍の戦死者はわずか三人であった。
【 第六話 】
ノディオン城のシグルドたちがアグスティの先攻軍と戦いを始めた頃、シグルド軍の本拠地である東のエバンス城は奇妙な緊張感の中にあった。 偵察に出た兵のおかげで、シグルドたちがどういう状況にあるのかが分かるし、情報はアンフォニー城からグランベル王国に帰還する際に立ち寄ったフィラート卿からももたらされた。 シグルドたちが勝つほどに、その立場が危うくなっていくのではないか。 エバンスに残るアーダンはそのようなことを考えた。 何にせよ、アグストリア国内に戦争が起こっているのだ。グランベル領とはいえ、ここエバンスにいつ戦の手が伸びて来るかもしれない。 守備を任されたアーダンは、気を引き締めて愛用の剣の感触を確かめた。 だが、大人たちの心情は子供には通用しないらしい。 「アーダン!」 大きな声で彼を呼んで、かけて来るのはウィルシェルーン。ヴェルダンの王女である。 自分よりはるかに大きなアーダンを見上げて、何があったのか頬をパンパンに膨らませている。 「どうしたんだ、ウィル…」 何事か、そう思わないでもなかったが、この喜怒哀楽の激しい少女は三日に一度はこのように怒っていたので、アーダンはわずかに肩をすくめた。 このエバンスの守備を任されてから約一ヶ月、子供たちの相手をする女性がほとんど居なくなったせいで、アーダンが彼女たちの相手をするようになっていたのだ。 「シャナンがアイラが帰って来たら剣を習うと言うから、私も一緒に習いたいと言ったら駄目だと言うんだ。私はイザークの人間じゃないからと言うんだぞ!? こんな差別ってあるか!?信じられない!」 それだけを一気にまくし立てて、思い切り憤慨する。 ダンダンと小さな足で床を踏みつけるしぐさが、心底怒っているウィルには悪いと思いながらも、アーダンには面白い。 「なんだ、アーダン!私がこれほど怒っているのに笑うなんて失礼だぞ!オイフェだったら相手をしてくれるのに!」 今度はアーダンに対しても怒っている。 吹き出しそうになるのを何とか堪えて、アーダンはゆっくりとかがんだ。 「何だ、剣を習いたいのだったら俺が教えてやろうか、シアルフィの剣だってそう捨てたもんじゃないぞ?なにせ聖戦士バルドの国だ」 十二聖戦士の名をあげて、アーダンが提案するが、 「嫌だ!私はアイラの剣がいい!だってアーダンは流星剣が使えないじゃないか!」 思い切り拒否される。 折角の心遣いを嫌がられて、しかしアーダンは不快にはならなかった。 流星剣など、並みの人間が使えるものではない。イザーク王家の剣術に対抗するだけ無駄というものだからだ。 アーダンがウィルに言葉を続けようとしたときであった。 「アーダン!」 再び彼を呼ぶ声がして、今度はこの城にいる子供の内のもうひとり、イザーク王子のシャナンが走ってきた。 途端に嫌そうな顔をしてアーダンの後ろに隠れるウィルに苦笑して、しかしアーダンは真剣な顔でシャナンを見た。 シャナンの声音に聞き流せない響きを感じ取ったからだ。 「シャナン王子、どうしたんだ?」 彼らがウィルに心安い口調を使うのは、彼女自身が敬語を使われることを拒んだためだった。シャナンも同様に王子に対する扱いを嫌がったので、口調こそ敬語ではないものの、王子という敬称は使用されたままだった。これは実はイザークの王女でもあるアイラに配慮されたものであるのだが。 「シグルドの仲間って言う人が来たんだ!もうすぐこの城に敵が攻めてくるって!」 「何…!?」 アーダンはとうとう来たか、という心情の上で感想を漏らし、背後のウィルは心底から驚いて息をのんだ。 「その人はどこに?」 「兵士の人が会議室に通すって言ってた」 「わかった。シャナン王子はウィルとここにいてくれ」 言って、アーダンは早足で部屋を出て行った。 後に残ったウィルは、それまでの怒りも驚きの中に消え失せて、シャナンを見た。 「戦争するのか…?」 「さっきの人はそうやって言ってた。レヴィンっていう人だよ」 不安そうに、二人の子供たちは顔を見合わせた。 今までの戦争は全て勝ち進んでこれた。しかし、今この城にはわずかな兵しかおらず、指揮官であるシグルドを始めとした大半の者がいないのだ。 この城に残る兵たちの内で、彼らが実力を知っているのはアーダンのみ。他はたいして親しくもない兵たちばかりなのだ。 大丈夫かな…。 言葉には出さずに、二人はかわりに互いの小さな手を握った。
シグルド不在の間のエバンスの守備を任されたアーダンは、新たな仲間であるレヴィンから伝えられた情報に息をのんだ。 アーダンはここエバンス城が襲撃を受ける可能性を充分考えていた。しかし、エバンス城の周辺は高い山に囲まれており、アグストリアが侵攻をするとすれば西の林の中を抜けるしかない。 そう考えてアーダンは西に偵察隊を派遣していたのだが、今回のレヴィンのもたらした情報はまったくの予想外の物だったのだ。 アグスティ城からペガサスナイトが出撃する。天然の城壁ともいえる北の高い山ですら、ペガサスナイトの前には意味がない。考えもしなかった北からの襲撃に、アーダンは腕を組んだ。 「この城に残っている兵の全てを北に集結させるべきだ。大丈夫、西からは敵は来ない」 北と西の同時攻撃を危惧するアーダンに、レヴィンは言ってのけた。 この城に敵が来るためにはノディオンのシグルド軍を撃破しなくてはいけない。それに、彼らはエバンスよりもまずアグストリア領のノディオンやハイラインを狙うであろう、と。 「やけに自信あり気だな」 アーダンの素直な言葉に、レヴィンは「まあな」と鼻を掻いた。 「シレジアのペガサスナイトは俺を探しているらしい。つまり、シグルド軍とは無関係なのさ」 だから、お前たちに厄介事を持ち込んでしまったということになるのだ、とレヴィンは謝罪するが、しかしアーダンはからりと笑った。 「なに、どうせ戦は避けられるものじゃないんだ。それにあんたはおれたちの仲間だろう、仲間を助けるのが騎士の務めというもんだ」 大きな身体を軽く揺すって、アーダンはレヴィンの肩を叩いた。 「さあ、戦の準備をしようか」 やけにあっさりとしたアーダンの言動に、少しばかりは責められることを覚悟していたレヴィンは拍子抜けした気になる。 いかつい表情のアーダンは、しかしその性格は温厚であり、また冷静でもある。レヴィンはその片鱗を垣間見た気になった。
*
アグスティ城の先攻軍に大勝したとはいえ、シグルド軍に負傷者がいなかった訳ではない。むしろその反対で、死者こそ少なかったものの怪我人は多く出た。 シグルド軍の中で回復要員というのはとても少ない。 ライブを使える者はエーディンとエスリン、そしてラケシスくらいのもので、彼女たちの手が回らないような軽症の者は薬草で各自の治療を済まさなければならなかった。 三倍近かった戦力の差は、このようなところで皺寄せを生んだ。 中には瀕死傷を負ったものまでおり、最も魔力の強いエーディンは彼らにかかりきりになった。そのために、他の者たちの治療はエスリンとラケシスの担当になる。 後方支援を言いつけられたことに、最初こそ不満を持っていたラケシスだったが、しかし戦いが始まって間もなくそんなことも考えられなくなった。 怪我人は戦の間も治療にやって来て、再び戦場に赴く。怪我人が次々に増えていき、そのような場に今まで居合わせたことになかったラケシスは、文字通り目を回す勢いであった。 すっかり日も暮れた頃、ようやくラケシスは全ての者の治療を終えることが出来た。その中にはイーヴたちも居て、近しい者が傷を負う辛さをもラケシスは知った。 ふう、と息をついて、城の中庭に出る。 魔力と精神力を使い果たした感のあるラケシスは、疲れ切っていて夕食もあまり咽喉を通らなかった。食べたほうが良いのは分かっているのに。 月が昇りかけている夕闇の中、勝手知ったる中庭を歩く。終わりに向かっている夏の庭は、一足早い虫の声が聞こえる。 人が目にする季節よりも、小さな生き物たちが感じ取る季節の流れの方がもしかしたら正確なのかも知れない。時折吹く風に涼しい空気を感じて、ラケシスはそんなことを考えた。 歩いていると、ヒュン、と風を切る音がする。 誰かが剣を振るっているのだ。 すぐにそう分かってラケシスはゆっくりとそちらに歩いていった。広い中庭は、庭園ほどではないにしても美しく整えられている。花を愛したラケシスの義姉が、自ら手入れをしていた庭なのだ。 彼女がこの城を離れた今、木々たちの元気がないと感じるのは、きっと間違いではないだろう。 「なんだ、お姫さんか」 ラケシスがその人物を判別する前に、向こうがラケシスに気付いたようだった。 もはや聞きなれてしまった口調と声は、ベオウルフのものだ。 「ベオウルフ…何をしているの?」 敵や知らない人間でなかったことに少しばかり安堵して、ラケシスはベオウルフに近付いて行く。 「見ての通り、剣を振ってるのさ。利き手がどうもしっくりこねぇから…」 左手を握り締めたり開いたりしているベオウルフの左腕に、包帯が巻いてあることにラケシスは気付く。 「ベオウルフ、怪我をしたのですか……?」 「かすり傷だ」 肯定するベオウルフだが、ラケシスは驚いた。 怪我をした者の治療は全て行ったはずだった。そして、その者たちは包帯などもう巻いていない。つまり、彼は治療に来なかったことになる。 「なぜ治療に来なかったのです?その包帯は、自分で巻いたのでしょう?」 「かすっただけだったからな」 わざわざあんたたちのところに行くまでもない、と。 「けれど、左手の具合がおかしいのでしょう?それはかすり傷とは言えません」 言うとベオウルフは苦笑したようだった。 彼の心底からの笑顔というものを見たことがない。そんなことをラケシスは頭の端で考え、そしてそんな思考に驚いた。 彼の笑顔を見たからなんだというのだろう。 「杖を持ってきます。ここに居てくださいね」 「いや、いらねぇから」 「駄目です!」 即座に否定して、ラケシスは城の中に戻って行った。
ラケシスがライブの杖を持って大急ぎで戻ってきたとき、ベオウルフが中庭の石に腰掛けていたので、彼女は安堵の息を吐いた。 居なくなっていたらどうしよう。そんな考えもあったのだ。 「斬られたのではないのですね」 ベオウルフの包帯を解いたラケシスは傷跡を見て言った。ベオウルフの腕には血の痕も裂傷もない。ただ、かなりの範囲で肌が紫色に変色していた。 「ああ、多分打ち身だろう」 敵兵の突進から、落馬していた仲間をかばった時に受けたものなのだ、とはベオウルフは言わなかった。怪我をしたという事実以外は、伝える必要がないからだ。 「打ち身どころではありません、捻挫をしてしまっています。よく剣が振るえたものですね」 しばらくベオウルフの手を取っていたラケシスは、嘆息した。 反対にベオウルフは皮肉気に笑う。 「この程度では怪我とは言わねぇよ。俺たち傭兵にはな」 「わたくしは今まで傭兵という職業の方には会ったことがないのです。……あなたを見ていると不思議で仕方がありません。あなたは何のために戦っているのですか?」 ベオウルフがもとは敵兵であり、一万ゴールドを引き換えにしてシグルド軍に意趣替えをしたことを言っているのかもしれない。 それまでラケシスが見てきたのはエルトシャンやイーヴたち、誇り高く高潔な騎士だけだったのだろう。 「生きるためさ」 あっさりと、ベオウルフは答えた。 「生きるために、戦場に出るのですか?それは矛盾しています」 「世の中にはただ息をするだけで金が手に入る人間もいるが、それはほんのわずかな人間だけだ。あとは、必死で働いて金を稼いで、生活をしていくしかない。俺が傭兵になったのも、剣の腕ぐらいしか飯の種になるものがなかったからさ」 ベオウルフの言葉はラケシスの胸に痛みを覚えさせた。 ラケシスは明らかに前者、働かずに満ち足りた生活を送ってきたものだったからだ。 「別にあんたを責めているわけじゃないぜ、お姫さん。要は分相応ってことだ。裕福な人間はそうでない奴らに責任を持たなくてはいけない、エルトシャンたちは、王としての責務を果たしているだろう?そういうことだ。俺が気に食わないのは自分の今の生活を当然の産物だと考えているバカたちだ」 口調はまったくふざけた物であるのに、ラケシスにはベオウルフの気遣いが感じられる。そして、彼の言葉にそれまで聞けなかったことを思い出した。 「あなたはエルト兄様とどういうお知り合いなのです?」 ラケシスはかつて一度もベオウルフのことをエルトシャンから聞かなかったのだ。 純粋な質問に、しかしベオウルフは肩をすくめる。 「どういうってなぁ…。悪友ってやつかもな、あいつが城を抜け出して街の闘技場に居てな、そん時に知り合ったんだ。もちろんあいつの身分なんて全然知らなかったんだが」 当時を思い出しているのだろうか。懐かしそうに目を細める。 「で、いつまで俺の腕を持ってるんだ?」 不意に話を変えたベオウルフだが、ラケシスは慌てた。 確かに、治癒するために急いで杖を持ってきたはずなのに、いつの間にか話がそれてしまっていたのだ。 「ごめんなさい、すぐに治します」 言って、意識を集中させる。 すっかり暗くなった中庭の一角に、淡い光が広がった。
ラケシスを部屋まで送り届けるベオウルフの前に、三人の騎士が再び立った。 「イーヴ、エヴァ、アルヴァ。どうかしたの?」 見上げるラケシスに、しかしイーヴは厳しい視線を向けた。 「どうかしたではありません。ラケシス様。ノディオンの王女ともあろうお方が、このような時間にその様な者と一緒に居るとはどういうことですか?」 確かにまだ若い王女が夜に男と二人きりというのはよろしくないかもしれない。分かってはいたが、ラケシスはつい反論した。 「わたくしはベオウルフの怪我を治療していたのです。回復魔法が使える者の勤めを果たしたまでです」 「ですが、ご自身のことをもう少しお分かりください」 イーヴの言葉はにべもない。 やれやれと、ベオウルフは肩をすくめた。 「貴殿もそうだ。ラケシス王女はこの国にとって大切なお方なのだ、配慮が足らぬのではないか」 「イーヴ…!」 ラケシスの咎める声を、ベオウルフ自身が遮った。 「ま、それもそうか。悪かったな」 そう言ってくるりと向きを変えてしまう。その際にラケシスの頭にポン、と手を置いた。 「腕の治療すまなかったな。ゆっくり休んでくれよ、お姫さん」 そのままもと来た道を戻っていってしまうベオウルフに、ラケシスは向ける言葉が見つからなかった。
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ペガサスナイトがエバンス城に接近したのは夜七時をわずかに回った頃だった。 夏ということもあり、空はまだ薄暗い程度で、塔から望遠鏡を覗き込んでいた兵士は薄闇の空に黒\い影が浮き上がっているのを発見した。 「ペガサスナイト発見、数は十騎、距離は3キロ!」 この報告はすぐにアーダンとレヴィンの元に届いた。 「予測より遅かったな」 「まあ、真っ暗になる前でよかった」 レヴィンにアーダンは応じて、わずかしか居ない守備兵を北側に集結させる。 空を飛べるペガサスナイトに篭\城は無意味だ。 それならばいっそ、城に到着する前に撃破してしまった方がいい。 「じゃあ、よろしく頼む」 事前の軍議で、レヴィンはアーダンにある頼み事をしていた。それはペガサスナイトの隊長に攻撃を仕掛けないということ。 「これは突飛な話だし、俺自身も捨てた身分だが、俺はシレジアの王族なんだ。ペガサスナイトの隊長は俺の予想が正しければ旧知の間柄だ。何とか話を付けさせて、味方に引き込みたい」 この話にアーダンは驚きを隠せなかったが、すぐに思い直した。 このシグルドの軍には王や王子といった身分の者がたくさんいる。今更シレジアの王族が加わったところで構わないではないか。 このような発想が出来るところがアーダンである。彼はレヴィンが自分の身分を隠したがっていることを察知し、城の兵士たちには本当の身分を明かさずにただ吟遊詩人とだけ紹介した。 それだけで充分だと判断したのである。
横一列に陣を組んだエバンス城の兵士たちから北に少し離れた上空に、十騎の騎影が並んだ。 「我が名はフュリー、シレジアの天馬騎士団の一翼を担うもの。我らが王子を捕虜とし、辱めた罪を思い知るがいい!」 中心のペガサスに乗\った女性が高らかに宣言する。 「言い切られたな、王子様」 「やっぱりフュリーだったか。あいつは昔から融通が利かなくて騙されやすいんだ」 アーダンが隣りのレヴィンを面白そうに見やる。 だが、油断はしなかった。 「かかれ!」 鋭いフュリーの声とともにペガサスナイトたちが下降を始める。 空中での一撃離脱を得意とするペガサスナイトに、地上の兵士は不利だ。 「弓兵前へ!――射て!」 アーダンが指揮をとる。 ペガサスナイトは唯一この矢に弱い。特に今は薄暗い夜、矢筋を計るのには困難だ。 数騎が地面に墜落したが、同時にエバンス兵も地に膝をつく。 中でも先程名乗\ったフュリーという女性はさすがに強かった。 「エルウィンド!」 かまいたちのごとき青い風が上空に向かって放たれる。 アーダンにも突撃してくるペガサスナイトたちだが、しかし鉄壁の防御を誇るアーダンの鎧にすら、傷をつけることは難しい。同じシアルフィ騎士団グリューンリッターであるアレクに「固い、強い、遅い」と言い切られるアーダンは、守備にこそその力を最も発揮するのだ。 「フュリー!聞こえるか、俺だ!」 夜の空にいるはずの女性にレヴィンは声を張り上げる。 反応はすぐにあった。 「その声は、まさかレヴィン王子……!?」 レヴィンは兵たちから離脱し、走り出すと一騎の天馬が彼の後を追った。それこそがフュリーである。 「よし、全軍攻撃を控え、守備に徹しろ」 それを確認してアーダンは指示を出す。後はレヴィンがあのペガサスナイトを説得するだけだ、と。
「レヴィン様…ご無事だったのですね……でも、そのお姿は…」 ペガサスから降りて膝をつくフュリーに、レヴィンは苦笑した。 「俺は今はしがないただの吟遊詩人さ。ところでフュリー、俺が捕らわれたなんてよた話、良く信じたな」 「よた…では、シャガール王は私に嘘を…!?」 驚くフュリーに、しかしレヴィンは愉快そうに声を立てた。 「相変わらず素直だな。よくそれで天馬騎士団をやっていけるもんだ、まあ、シルヴィアみたいにすれろとは言わないけどな」 「シルヴィア、ですか…?」 「いや、何でもない。ところでフュリー、なぜ俺を探す?俺は出奔した身だぞ」 言ったレヴィンをフュリーは厳しい視線で見上げる。 新緑の眼が揺れた。 「レヴィン様が誰にも告げずにシレジアを出てもう二年になります、ラーナ王妃様はレヴィン様を思い、国民も王子のご帰還を待っています」 「……俺が帰れば先王の遺言通りに王位を継がなくてはいけない。だが叔父上たちはそれを望まない。お前はこのアグストリアのような内乱をシレジアに起こしたいのか?」 そう、レヴィンが国を出た理由はそれであった。 国を思い、敏い頭を持つレヴィンには自分が王位を継ぐことによって起こる事態を容易に想像できた。ただシレジア国内だけの内乱ならばまだ良い。レヴィンが一番恐れるのは叔父たちが他の国と手を結び、介入を許すことだ。 「戦争を起こして傷つくのは俺たちじゃない、国民だ」 「ですがシレジア王家は風神フォルセティの血を引く高貴な家柄、そして、その力を受け継いでいるのは王子ただ一人なのです。あなた以外にシレジア王家をつげる方はいません。国民もみな、それを望んでいますレヴィン様。…ラーナ様は泣いておられましたどうか……どうかお戻り下さい」 地に頭を付けるかという位に深く頭を下げるフュリーが涙を流していることにレヴィンは気付いていた。彼自身も膝をついて、フュリーに顔を上げさせる。 「お前まで泣かないでくれ…俺は女の涙に弱いんだ」 心底弱ったという表情で、レヴィンはしばらく口を噤む。 迷いと、それとは相反対するような冷静な思考で、レヴィンは口元に手をあてた。 「……フュリー、もう少し待ってくれ、決心がつけば、必ず母上のもとに帰るから」 ゆっくりと、言葉をつむぐ。 この二年の間、王位を継承するということを考えなかったわけではないのだ。 ただ、きっかけと決心がないだけで……。 わずかに戸惑いを潜ませているレヴィンの声音に、フュリーは顔を上げて涙をぬぐった。 「分かりました、ではレヴィン様がシレジアにお帰りになる日までお供させていただきます」 言うフュリーの素直さから来る強情さは、レヴィンも知っていた。 諦めるように一度首を振った。 「分かったよ。俺は今シグルド公子の軍にいるんだ、あの公子とは気が合うんでね。…とりあえずあのペガサスナイトたちを引かせてくれないか」 「はい、分かりました」 レヴィンに一礼して、フュリーは天馬に飛び乗\ると鮮やかに空に飛び立った。 こうして、エバンス城の危機は去り、シグルド軍にフュリーが新たに参加することになる。
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もうひとりのオリジナルキャラクター、ウィルシェルーンの小さな頃です。
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Posted:2004-05-24 09:46| |
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