雪之丞
级别: 火花会员
编号: 18260
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组织头衔: 换头部部长
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思いは永久(とわ)に
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突然の報を受けてドズルにやって来たスカサハは、その足で両親との対面を果たした。半信半疑だった彼も、二人に出会うなり、ラクチェと同様、無条件に彼らの存在を受け入れたのだった。
今は、レックスと二人、ベランダから中庭を眺めながら、父と子の会話を交わしている。 話題は、アイラの甥であり、スカサハとラクチェの育ての親でもあるシャナンのことに移っていた。
「あの悪ガキが、そんなに立派になったのか。信じられんな」 王として現在もイザークを率いているシャナンの事を熱心に語るスカサハに、レックスが返した言葉がこれだった。 「悪ガキ…って………あの…もしかしてシャナン様のことですか?」 恐る恐るといったふうに、スカサハが尋ねる。 「もちろんだ。あいつは年中俺に悪さばかりしていた。もっとも、そんなとこも甘えの裏返しだと思えばかわいいもんだったがな」
自分にとっては、敬愛と崇拝の対象でもある存在、イザーク王シャナン。その彼を、こうもあっさりと「悪ガキ」よばわりする父に、スカサハは一種尊敬にも似た気持ちを抱いた。 今まで自分の周囲にいた人間の、誰とも違う存在感。そして、側にいるだけでなぜか心が落ち着くような安心感が彼にはある。 それが肉親の絆によるものなのか、レックス個人の人間性なのかはわからなかったが、スカサハの胸の内を喜びの感情が満たしているのは確かだった。
「あの…。お義父様、スカサハ、お茶がはいりました」
その時、背後から控えめな声が聞こえてきた。二人が振り返ると、長い銀の髪の少女が微笑みを浮かべて立っている。
お義父様―――。 それが、自分のことであるとレックスが気づくまでに、しばらくの時間が必要だった。ラクチェ以外に自分を父と呼ぶこの少女に、レックスは心当たりがない。
「よろしければ、こちらへどうぞ」 促されるまま室内に戻り、椅子に腰をおろしたレックスは、お茶の入ったカップを渡してくれた少女に改めて視線を向けた。 慣れた手つきでお茶を淹れるその姿には、気品と落ち着きが備わっている。アイラやラクチェ夫婦と親しげに言葉を交わしているところから見ても、使用人の類でないことは確かだ。
「ティルテュ……? いや、アゼル…?」
無意識のうちに、幼なじみの名前がレックスの口に浮かんだ。 目の前の少女の、銀の髪と淡い紫の瞳はティルテュを思い起こさせたが、その顔立ちや雰囲気は、彼の親友アゼルを彷彿とさせる。
父の様子に気づいたスカサハが、慌てて立ち上がった。 「すみません、父上。紹介が遅れました。彼女は、私の妻のティニーです」 「ティニーと申します。わたしの両親は、お義父様とは幼なじみとうかがいました。どうぞ、よろしくお願い致します」 そう言って、スカサハの隣で少女が深々と頭を下げる。一瞬にしてレックスは少女の正体に思い当たった。
「そうか、アゼルの娘と結婚したのか。スカサハ、おまえは見る目があるな。さすがは俺の息子だ」
変なことを誉められて、喜んでいいものかと、スカサハが複雑な表情を浮かべる。
「そういや、ティルテュが言ってたことがあったな。まだ赤ん坊のスカサハを見ながら、そのうち自分たちに女の子が生まれたら、スカサハと婚約させるんだって。なあ、アイラ?」 レックスは、隣に座っている妻に同意を求めた。 「ああ、そんなこともあったな。アゼルは、親が勝手に決めるのはよくないと言って、最後には喧嘩になったんだ」 「喧嘩する必要なんかなかったんじゃないか」
しばし、レックスの幼なじみの話題に花が咲く。 自分の両親でもある二人の話を、ティニーは懐かしい思いで聞き入っていた。 だが、ふと隣に視線を走らせた時、横で浮かない表情を見せている夫に気づいた。ついさっきまで、あんなに嬉しそうにしていたのに…そう思い、スカサハの肩にそっと手を伸ばす。
「どうかしたの?スカサハ」 小さく問い掛けると、スカサハがはっとしたような顔をする。 「いや…。ラクチェは母上にうりふたつなのに、俺はあまり父上に似ていないなと思って…」 ほんの少し、寂しそうな色がその口調に混じっている。 「そんなことないわ。さっきお二人が並んでいた後ろ姿、背中がそっくりでした」 「え?」 「ふとした時に見せるしぐさもよく似ているわ。やっぱり親子なんだなって、わたし何度も思いましたもの」 「……そうか」 自然とスカサハの口元に笑みが浮かんでくる。
「スカサハ。顔が嬉しそうよ」 「わかるかい?」 額を寄せ合うようにして、二人はこっそりと笑いあった。
やがて、母親と話を始めたスカサハと交換するような形で、今度はラクチェがレックスと共にベランダに足を運\んだ。
「ヨハルヴァはおまえを大事にしてくれるか?」 レックスの第一声がそれだった。やはり父親にとって、娘の結婚相手は気になる存在なのだろう。 「ええ。もちろんよ」 ラクチェの表情を見て、聞くまでもないことを聞いてしまったとレックスは悟る。
「わたしね、なんとなく父さまってヨハルヴァみたいな人なんじゃないかって思ってたの。二人とも、家を捨ててまでも自分の信念を貫いた強い人でしょう」 「それでどうだった。似ていたか?」 「うん。なんだか父さまと一緒にいると、ヨハルヴァと一緒にいるみたいな安心感があるの。あ……逆かしらね」
ラクチェはレックスを見つめると、ためらいがちに彼の腕に手を伸ばした。そして思い切ったように両手を父の腕に絡ませて、頬を寄せる。 「でも、嬉しい。これからは、ずっと一緒にいられるのね」 答の代わりに、大きく暖かな手がラクチェの肩を抱き寄せてくれた。 「ずっとずっと夢だったの。いつかきっと父さまと母さまがわたし達を迎えに来てくれる。そして、四人で一緒に暮らす。それが、子供の頃からのスカサハとわたしの夢だった…」 「だけど、おまえにはもうヨハルヴァという家族がいるだろう? スカサハだって今ではティニーが一番大切な存在になっているはずだ」 「それでも、父さまと母さまは特別よ。他の誰とも比べることなんかできないわ」 むきになったように言うラクチェを、愛おしそうに青い瞳が見つめている。その瞳に、ほんの少しの寂しさが浮かんでいることを、この時のラクチェはまだ気づかなかった。
思いは永久(とわ)に
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-5-
フリージ公爵夫妻がドズル城に滞在して6日目の朝こと。廊下ですれ違おうとしたスカサハを、ヨハルヴァが呼び止めた。
「フリージにはいつ帰るんだ?」 いきなりそんな言葉を向けられて、スカサハはとっさに答えることができなかった。 「こんなに国を空けていて大丈夫なのか? 責任感の強いおまえらしくないな」 続けて言われた言葉に、さすがにスカサハも不審な表情を浮かべる。
「何が言いたいんだ、ヨハルヴァ。俺達がここにいるのが迷惑なのか?」 「自分の事情よりも責務を果たすことを常に優先するおまえがフリージに帰ろうとしないのは、おまえの両親がいつまでここにいられるのか心配だからじゃないのか?」 スカサハの顔から表情が消える。それにはかまわずに、ヨハルヴァは言葉を続けた。
「あの話を信じているのか? バーハラの戦場から20年近い時を超えてここに来たという話を」 「信じるも何も、現に父上と母上はここにいるじゃないか」 「話の通りだとすると、二人は戦場からここに飛ばされたことになる。バーハラの戦いは、炎が渦巻く凄惨な殺戮の場だったと聞いた。だが、あの二人は傷ひとつ負っていない。衣服もどこも破れていないし、汚れすらなかった。とても、ついさっきまで戦場にいた人間とは思えない」 「ヨハルヴァ…」 恐ろしいほどに真剣なスカサハの表情がある。
「ヨハルヴァ。そのことを、ラクチェには絶対に言うな」 「当たり前だ。ラクチェを悲しませるようなことを俺が言うわけないだろう」 二人の視線がぶつかった。
「ただ俺は、おまえの考えを確認したかっただけだ。それはもうわかった。だから、この話は終わりだ」 それだけ言うと、ヨハルヴァはそのまま去って行く。後には沈鬱な面持ちのスカサハが一人取り残されていた。
ベランダに置いた椅子に腰掛けて、アイラは秋の木洩れ日の中で目を閉じていた。 ここに来て以来、ずっと身体の調子が優れない彼女は、床に臥せってはいないものの、こうして体を休めていることが多かった。
やがて人の気配を感じてふと目を開くと、傍らにレックスが立っている。 「レックス…」 「起こしちまったか? もっと休んでいていいぞ」 「いや。もう大丈夫だ」 気遣うような夫の顔に、アイラは微笑みを返した。そして、そのまま言葉を続ける。
「こんな日々が訪れるとは思ってもいなかった」 「そうだな」 「この平和な世界を手に入れるために、あの子達がどんな辛い思いをしたのかと思うと、その時側にいてやれなかった自分がとても悔しい」 「アイラ…」 「だが、二人とも、まっすぐで心の優しい人間に成長してくれた。シャナンとオイフェに感謝しなければいけないな」 「その通りだな。それにしても、俺は、ラクチェがドズルの男と結婚しているとは思わなかったぞ」 「わたしの娘だからな。別に驚くことはないだろう?」 「そういう問題か?」 「ラクチェもスカサハも幸せそうだ」 「ああ」 「レックス……」 「何だ?」 「わたし達は、いつまでここにいられるのだろう」
少しの沈黙が流れる。 レックスは何も言わずに、背中からアイラの肩を抱きしめた。
「ねえ、母さま。いつか、わたしと手合わせをお願いできるかしら」 ラクチェがそんな願い事をしにやってきたのは、それから少し経った時だった。
「シャナン様がいつもおっしゃってたの。シグルド様の軍の中でも、母さまは一番腕の立つ剣士だったって」 無邪気な表情で話すラクチェに、レックス何か言いかけた。だが、それを遮るように、アイラが立ち上がる。
「わかった。では、今からではどうだ?ラクチェ」 「えっ。でも、母さま。まだ身体が本調子ではないんでしょう」 「大丈夫。今日は特別気分がいいんだ」
すでにアイラは側に置いてあった剣を手にしている。そのしっかりした足取りからは、確かに身体の不調はうかがえない。ラクチェも安心して、腰の剣に手を伸ばした。
庭の中ほどに進み、二人向かい合わせに剣を構える。 イザーク流のその構えは、アイラからシャナンへ、そしてシャナンからラクチェへと受け継がれたものだ。
先に動いたのはラクチェだった。素早く繰り出されたその剣を、アイラは軽く受け流す。 全く同じ輝きを持つ二本の剣が、激しく交わる音があたりに響いた。一見押しているのはラクチェだが、決め手となる突きは一度も入らない。無防備にさえ見えるのに、アイラには全く隙が見つからなかった。 膠着状態を破るため、ラクチェは一旦引いて間合いをとる。
その時、アイラが思いもよらない行動をとった。 構えていた剣を、すっと下におろしたのだ。
「母さま?」 戸惑うラクチェに向かって、アイラは静かな微笑を浮かべる。 「強くなったな、ラクチェ」 ラクチェが言葉を返そうとした次の瞬間―――アイラの身体がぐらりと傾いた。 「母さま!」 思わず駆け寄ったラクチェの腕の中に、力を失ったアイラの身体が倒れこんできた。
その後、レックスによって部屋の中に運\び込まれたアイラは、ほどなく意識を取り戻した。 しかし、その顔色は優れない。
部屋の中には、レックスとラクチェの他に、スカサハとティニー、そしてヨハルヴァの姿も見える。 寝台の横でアイラの手を握りしめたまま泣いているラクチェ。その隣では、リライブの杖を手にしたティニーが、途方にくれたような表情をしている。さっきから何度も治癒の呪文を詠唱しているのに、全く効果が現れないのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい、母さま。具合が悪いのに、稽古の相手なんかさせたから」 泣きじゃくるラクチェの頬に、アイラの手が優しく触れる。
「おまえのせいではない、ラクチェ。これは、しかたのないことなんだ」 アイラは夫の手を借りて寝台の上に身を起こすと、ラクチェに向かって寂しそうに微笑みかけた。
「わたし達は帰らなければならないようだ」 思いもしなかったアイラの言葉に、ラクチェが驚きの声を上げる。 「帰るって、どこに!?ずっとここにいればいいじゃない。……だって、帰ったりしたら、母さま達は……」
二人が帰るというのは、あの凄惨なバーハラの戦場以外にない。そんなところに帰ったりしたら、待っているのが死であるのは明かだ。 訴えるような表情のラクチェに、レックスが穏やかな視線を向ける。
「悪かったな、ラクチェ。俺達は少しだけおまえに嘘を言ったんだ」 「え…?」 「俺達の肉体は、あのバーハラの地ですでに滅びている。この姿は幻にすぎない」
父の言葉にラクチェが絶句する。瞳を見開いたまま、声もなく二人の顔をただ見つめていた。
「最後の瞬間、わたしとレックスは強く願った。イザークに残してきた子供達の元へ帰りたいと。そして、四人で幸せに暮らしたいと」 「今の俺達は、その願いが形をとっただけのもの。この姿は現実のものじゃないんだ」 「そんな……!」 ラクチェが悲鳴のような声をあげる。 隣でティニーも驚きに言葉を失っている。そして、スカサハとヨハルヴァが、そっと視線を下にそらした。
「願いがかなえば思いも薄らぐ。おまえ達の成長した姿を見て、平穏な時を共にすごせて、わたし達は幸せだった。だが、心が満たされていくにつれ、この姿を維持するのは難しくなっていく」 「どうやら、このへんが限界らしい。残念だがな」 「嘘よ!どうしてそんなことを言うの。また離れ離れになるなんて嫌!」 寝台の上にラクチェが泣き崩れた。その髪を、アイラが優しく撫でる。
「ラクチェ、スカサハ」 静かなアイラの声が聞こえた。 ラクチェとスカサハは同時に顔を上げ、両親を見つめる。
「愛している。これからもずっと、おまえ達を見守っている…」 そう告げた瞬間、ふいにアイラとレックスを形作るその輪郭がぼやけた。 子供たちの目の前で、二人の姿はまるで周囲の空気と同化するかのように次第に色素を失っていく。
「母さま! 父さま…!!」 「父上、母上!」
必死で伸ばしたラクチェの手は、虚しく空を掴んだ。さっきまで、確かにそこにいたのに、もう二人の姿はどこにも見えない。 寝台の上は、今まで人がいたぬくもりがまだ残っている。だが、そこにはただ何もない空間が広がっているだけだった。
思いは永久(とわ)に
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-6-
それから二ヶ月余りが過ぎ、ドズルもすっかり冬支度に入った。 ここのところ天候はずっと穏やかで、季節のわりに暖かな日が続いている。 相変わらず多忙な日々を送っているヨハルヴァの執務室をラクチェが訪れたのは、そんなある日の午後のことだった。
「ラクチェ。起きたりして大丈夫なのか?」
突然現れたラクチェの姿を見て、思わずヨハルヴァは椅子から立ち上がった。彼女は今朝、体調が悪くて床を離れることができず、侍医を呼んでいたはずなのだ。
ラクチェが両親との束の間の再会と別れを経験した秋の日。あれからしばらくの間、彼女はずっとふさぎ込んだままで、見ているのが辛いほどの傷悴ぶりだった。 だが、元々責任感の強いラクチェは、公妃としての責務を放棄したままでいることに耐えられず、すぐに政務に復帰した。自分を心配する周囲を気遣って、明るく振舞ってもいた。だが、その顔に本当の笑顔が浮かぶことはなかった。
しかし、今目の前にいるラクチェの表情は少しばかり印象が違う。無理をして作った笑みではなく、心の内側から零れてくるような微笑だった。久しぶりに見るラクチェの本物の笑顔に、ヨハルヴァも気持ちが明るくなるのを感じた。
「あんまり無理するなよ。俺一人でも、なんとかなるから」
正直言って、ラクチェがいないのは辛い。単純に計算しても、仕事が倍になるわけだから。だが、そんなことをおくびにも出さず、ヨハルヴァは妻に笑いかけた。
「ううん、ほんとにもう大丈夫。だって、病気じゃなかったし」 ラクチェは思い出したように、くすりと小さく笑った。
「それに、いつまでも悲しんでもいられないしね」 「何かあったのか?」 どこかふっきれたようなラクチェの表情に、ヨハルヴァが問いかける。
「うん、あのね。…子供ができたみたいなの」 「えっ!」 思わず固まったヨハルヴァの顔は、次の瞬間には喜びに溢れていた。
「本当か、ラクチェ!」 言葉と共に力いっぱい抱きしめて、はっとしたように慌てて腕を離し、それから改めてラクチェの身体にそうっと腕を回す。
「そんな壊れ物みたいに扱わなくて大丈夫よ。何だと思ってるの?人のこと」 「いや、それはそうだけど…でも…」
昨日までと何も変わらなく見えても、その身体の中にもう一つの生命が宿っているのかと思うと、何やら厳かな気持ちがこみ上げてくる。 神妙な顔で自分を見つめるヨハルヴァに、ラクチェは笑顔を返した。
「母さまと父さまが授けてくれたのかしらね」 「ああ、きっとそうだな」 ヨハルヴァの瞳が優しい色を帯びる。ラクチェは彼の胸にそっと頬を寄せた。
「わたし……本当は少し怖かったの。両親に愛された思い出を持たない自分が、ちゃんと母親になれるのかって」 「ラクチェ…」 「でも、今はきっと大丈夫。母さまと父さまが、ちゃんとわたし達を愛していてくれたことがわかったから。そして、いつでも二人が見守ってくれているから」
ラクチェは、窓から見える風景に視線を移した。 このドズルの大地に、大気の中に、森の木々の一つ一つに、二人の魂が融け込んでいる。その思いは永遠に、自分から子供へと伝えられていく。
―――ずっと、おまえたちを見守っている……
風に乗\って二人の声が、ラクチェの心に届いたような気がした―――。
<END>
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[90 楼]
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Posted:2004-05-22 17:00| |
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